最近、携帯大手キャリアのショップをはしごするという、珍しい経験をしました。
自分の親は後期高齢者なのですが、数年前に骨折をきっかけに足が悪くなって介護レベルが付きました。
そしてつい最近、圧迫骨折で外出がままならなくなってしまったのです。介護タクシーが必要なレベルです。
ところが、運の悪いことに、そのタイミングで長年使ってきた携帯電話端末(ガラケー)のボタンが壊れて、操作ができなくなりました。そのボタンは大半の操作で必要な「確定」あるいは「OK」に相当する役割りを果たしています。動作不良が発生したため、操作そのものがほとんどできなくなるという困った不具合でした。
親が契約していた携帯大手キャリアは高齢者に安心感を与えるイメージ戦略に成功している会社N社で、自分が契約している携帯大手キャリアS社ではありませんでした。
ちなみに親と自分は同居していません。とりあえず、近所のN社ショップに電話します。候補はグーグルマップで調べました。最も近いところに電話すると、回線が塞がっていてつながりません。ちなみに時間帯は夕方になろうかというところで、混雑していそうな感じです。次の候補のショップに電話するとつながりました。事情を話して機種変更をしたいと申し出ると、契約形態によっては親子の証明が必要(同居していないため)で戸籍謄本の写しが必要かもしれない、でも良く分からないので、センターに問い合わせてから返事したい、とのこと。プロショップの店員さんなら、こういったケースは珍しくないと思うのですが、要領を得ません。
とりあえず、ダメでも良いからショップに伺うと連絡します。そして親元に行って事情を説明して身分証明書と端末を借りてショップに突撃しました。自転車で5分くらいのところです。歩くと20分くらいかかります(上り坂があるので)。
ショップに到着すると、想定外の事態が起こりました。受け付けまで「2時間待ち」だというのです。時計を見ると午後5時です。
携帯電話の契約をしたかたならご存知でしょう。携帯電話の契約には、おおよそ30分以上かかるということを。つまり、2時間後に受け付けしたとしても、契約が完了する想定の時間は午後8時になります。これは完全にアウトです。
ちなみに親は上記のような状態のため、一刻も早く携帯電話を使える状態にしたい、というのが最優先事項です。ですから無理やりスケジュールを調整して突撃したのに、「2時間待ち」。そしてショップ店員は面倒くさそうに言いました「混雑していますので、予約をおすすめします」。電話したときに、すぐ必要だと言ったはずでしょう。あなた方のショップに行くと言ったでしょう。なぜ「今から行くと2時間待ち」だと教えてくれなかったのか。S社のショップに電話したことがあるのですが、このような対応はこれまでありませんでした。
怒っていてもしかたがないので、受け付けの順番待ちはやめて対策を考えます。最初はサードパーティのショップが近所にあったのでそこを頼ることにして突撃しました。そしたら、そこはサードパーティーではなく、低価格キャリアのY社ショップとなっていました。ガクリ。
そこでダメもとで思いつきます。マイナンバーポータビリティがあるじゃないか、と。幸い、すぐそばにS社のショップがあります。そこで相談してみようと。S社ショップを突撃して受け付け端末を探してうろうろしていたら、店員さんが声をかけてくれました。幸い、待ち行列はゼロ。大混雑のN社ショップとは随分違います。いや逆に少し心配なのですが、それは置いといて。相談です。
そして解決策が出ました。「主契約者を自分にして、親を家族割で契約する。そして端末にガラケー(元の機種となるべく操作感が同じもの)を選ぶ」です。親の電話番号は変わりません。ただし、電子メールアドレスは変わります。これは親が嫌がる点です。
しかしここで重要なのは、「携帯電話の契約内容の変更は、主契約者でないと対応できないことが多い」という事実です。後期高齢者である親は、もはや何か合ってもショップ(かなり歩く)に行って契約をあれこれ相談することは、困難です。介護タクシー状態ですから。そうなると、現在は元気な自分(しかも契約内容に詳しい)が主契約者になる方が、今後の対応がずっと楽です。
そこで親に電話して状況を説明して説得作業です。幸い、納得してくれました。並行してショップで契約の変更作業です。1時間くらいかかりましたが、午後6時すぎには完了しました。N社ショップだったら、まだ待ち行列状態です。
端末は当然ながら、ガラケーです。驚いたのは、スマートフォン(自分)に比べると、ガラケーは料金が安いこと。2年縛りを入れたので端末のハード代金はゼロです。契約パッケージそのものが、スマートフォンに比べると安い。これでは、高齢者はガラケーからスマートフォンに移行する動機はゼロに限りなく近いのでは(ショップの口車にノセられた場合や、スマートフォンに詳しい方を除きます)。
そして知人から聞いた話です。「安心」をうたうN社のショップ前には、開店前に行列ができていることがあると。それも高齢者の行列が。
ショップの店員からすると、高齢者は、携帯電話のことを知らない上に、ガラケー契約なのでちっとも儲からない、割の合わないお客さんに見えます。でも高齢者はN社に集中します。そもそも加入者数は大手でもN社がトップです。こうなると、N社ショップの店員は売り上げノルマがあったら、地獄です。苦労する割に売り上げが伸びない高齢者が押し寄せてくるのですから。当然ながら、対応もぞんざいにならざるを得ません。営業努力ゼロでも、お客が来ますからね。
そんな訳で、N社の契約を1件、S社に移転しました。N社にとってはありがたいことですね。もうからななくて携帯電話を知らない客を減らしたのですから。感謝して欲しいくらいですよ。
しかし時代は変わりました。S社のカタログだと、ガラケーはほぼ3機種しかありませんでした。スマートフォン、それもアンドロイドだらけです。ガラケーは選びようがないといいますか、一択でした。文字が大きくできて、操作ボタンがカチッとしているやつです。デザインはオシャレではありません。でも使いやすそうです。
といいますか、久しぶりにガラケーをいじったら、操作方法をほとんど忘れておりました(爆)。やべえ。
それにしても大手キャリアが後期高齢者にまでスマートフォンを勧めてくるこの風潮は、料金プランを考慮すると理解はできますが、顧客の満足につながるとは、あまり思えません。
大手キャリアが後期高齢者の顧客にすべきなのは、足腰が数年するとぶっ壊れそうな相手にスマートフォンを勧めることではなく、若くて元気な子供(それもできれば携帯端末に詳しい子供)を主契約者に変更することを勧めることではないでしょうか。
いみじくもS社ショップの店員さんがつぶやきました。「契約者は(自分のように)フットワークの軽い方が良いんですよねー」。その通りです。