Electronics Pick-up by Akira Fukuda

日本で2番目に(?)半導体技術に詳しいライターのブログ

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Common Platform Technology Forum 2013現地レポート「IBMの半導体研究開発」

米国シリコンバレーで開催されましたCommon Platform Technology Forum 2013の現地レポートをPC Watch様に掲載していただきました。


IBM、2020年代の半導体製造は単原子層レベルの超精密制御へ」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/event/20130208_586897.html


Common Platform(コモンプラットフォーム)とは、IBMGLOBALFOUNDRIESSamsung Electronicsのシリコンファウンダリ3社による半導体製造の協業グループのことです。でもって年に1回、技術講演会を米国カリフォルニア州サンタクララで開催しています。これがCommon Platform Technology Forumと呼ばれるイベントです。


このイベントの凄いところは、無料で聴講できること。しかもランチが付きます。もちろん事前登録あるいは当日登録が必要です。資料のハードコピーはなし、写真撮影は禁止といろいろ制限はあるものの、無料というのはなかなか凄いことです。


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半導体製造の世界で技術開発を主導している企業(あるいは企業グループ)にはほかに、IntelTSMCがあります。Intelは毎年9月にIntel Developer Forumと呼ぶ技術講演会を米国サンフランシスコで開催しています。でも有料です。しかも製造技術に関する情報はほとんど出ていません。Intelはシリコンファウンダリではないのですから、当然です。


それでは世界最大のシリコンファウンダリであるTSMCはどうか。世界各地でTechnology Symposiumと呼ぶ技術講演会を開催しているのですが、原則として招待制です。興味があっても顧客あるいは顧客候補とみなされないと、聴講できません。テキストは配布されるものの、譲渡禁止の誓約書にサインさせられるようです。報道機関は聴講できません。別途開催される記者会見があるものの、流される情報はきわめて限定的。しかも記者会見でTSMC関係者にとって気になる何かに触れてしまった報道機関は、記者会見に呼ばれなくなります。


半導体製造技術の情報が得られるイベントとしてはほかに、国際会議のIEDMがあります。こちらは有料ですし、専門集団だけの会合なので、専門知識がないと敷居が高い。


このため、Common Platform Technology Forumは半導体製造に関する情報を得ようとするエンジニアにとっては貴重な機会になっているようです。最近ではウエブで一部の講演については音声をストリーミング中継するまでになりました。


半導体ベンダーではファブレスの企業が少なからずありますし、ベンチャーの多くはファブレスです。でも、半導体製造技術を知らないわけにはいきません。何も知らなかったらそもそも、シリコンファウンダリとは会話が成り立たないでしょう。基礎知識は必須です。


Common Platformのこういった良き文化にIBMの影響があることは間違いありません。IBMは不思議な会社で、プリンタ事業、ハードディスク事業、PC事業とハードウェア事業を相次いで売却してきた歴史があるのですが、半導体事業だけは手放す気配がみえないのです。それどころか、とても売り上げに結びつきそうもない基礎研究を半導体分野では手広く手がけています。半導体の研究開発に関しては様々な企業や大学、公的研究機関と提携し、巨大なコンソーシアムを築いています(Common Platformはその一部に過ぎません)。研究開発の拠点や設備などはIBMのものを貸し出していますし、研究成果は国際学会でどんどん公表しています。


ほかにも国際学会の実行委員会への人材供給(つまりボランティア活動です)とか、IBM半導体産業への貢献はただならないものがあります。太っ腹です。


半導体産業では、金儲けの巧さでIntelとかSamsungとかTSMCとかが有名です。最近ではQualcommがやたらにもてはやされています。ですが、半導体コミュニティで最も尊敬されている企業はIBMです。私も、こんなIBMをすごく尊敬しています。


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