1980年代のことだったと記憶している(間違いかもしれませんがお許しください).
そのころ,松下電器産業(現・パナソニック)は「MMT会」と称するマスコミ向け勉強会を不定期に開催してた.マスコミ(M)と松下(M)の勉強(T)なのでMMTと略称されていたように思う.
松下の誰かが講師となり,マスコミの記者に特定のテーマについて説明するといった内容だった.トピックスの技術についてとても参考になる,よい会合だったと記憶している(今から思えばマスコミ懐柔策の一環だったとも感じられるが).
MMT会の会場は,東京駅近くのホテルの宴会場のことが多かった.時間は2時間程度で,お茶とお菓子(イチゴのショートケーキ)が付いていた.
MMT会のテーマはいろいろあったが,今でも忘れられないのが,「オーダーメイドで電子機器を作る」アイデアの講演である.産業用機器ではカスタム仕様は珍しくない.この講演では,民生用電子機器をカスタム仕様で作るというコンセプトが提示されていた.アナロジーは紳士服や靴などだった.
エンドユーザーの要求仕様を設計に反映し,電子機器の仕様を変える.クルマ(乗用車)では当時すでに,塗装色を指定したり,オプションでアクセサリーを指定することは常識だった.そういった用意されたバリエーションから選ぶ,のではなく,ユーザーの要望を設計段階に反映させるという点が目新しかった.
実は,具体的にどうやって実現するかについては,よく覚えていない.当時の講演でも,具体的な実現手法の説明はなかったのかもしれない.ただただコンセプトの斬新さに驚き,強い印象を受けた.1980年代に松下はここまで(未来を)考えていたのかと.
そして現代.あれから30年近くが経過した.
携帯電話機では自分なりのデコレーション(装飾)をほどこすことがエンドユーザーにとっては珍しくない.たくさんのアクセサリがサードパーティーによって販売されおり,自分だけのオリジナルな衣装をまとった携帯電話機を作れる.
でも薄型テレビや光ディスクレコーダー,HDDレコーダーなどはカスタム仕様にはなっていない.
両者の違いは「人に見られるかどうか」にあると今では分かる.紳士服,クルマ,携帯電話機,靴・・・いずれも人(他人)に見られる存在だ.一方,薄型テレビや光ディスクレコーダーなどは他人からは見られない.
それではパソコンはどうだろうか.パーツを組み合わせてパソコンを組み上げる層が一定数,存在する.「自分だけのパソコン」を作れる.しかしカスタムのパソコンはタワー型となるので,他人に見られることはあまりない.逆に他人に見られるノートパソコンは,カスタム化していない.「見られる」を境界線とすると,前述の定義とは逆になる.
携帯電話機はカスタム化しているのに,ノートパソコンはカスタム化していない.
それではPSPはどうか.DSはどうなのか.
少し混乱してしまった.このテーマついてはまた考えるとしよう.