Electronics Pick-up by Akira Fukuda

日本で2番目に(?)半導体技術に詳しいライターのブログ

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「35分の2」で生きる覚悟について

中学生のときに、奇妙な体験をした。

担任の先生が突然、5名だか7名だかの生徒を指名して、教壇に立たせたのだ。正確な人数は覚えていない。
ここでは、42名のクラスだったから、壇上に立った生徒が7名、残っている生徒が35名、ということにしておく。

なんの授業だったかも覚えていない。たぶん、ホームルームの時間だったのだろう。
そして教師は、壇上に立たせた生徒の誰がクラス委員にふさわしいか、生徒に無記名で投票させたのだ。
当然ながら、生徒の投票数は35票である。壇上の生徒7名に投票権はないからだ。

投票結果を教師が集計すると、不思議なことが起こった。特定の生徒2名に、投票が集中したのだ。
言い換えると、その2名だけが、10票を超える得票数を獲得した。
そして担任教師は、この2名をクラス委員に任命した。それで終わりだった。

なぜ担任がこのようなことをしたのかの説明は、クラスの生徒には一切なされなかった。
生徒からは質問は出なかった。自分を含め、何が起こっているのか、理解できなかったからだろう。クラスの雰囲気といえば、呆気にとられていたというか、呆然としていたというか、成り行きをただ眺めていたというか。そんな状態だった。

何しろまだ中学生である。絶対権力者(?)である担任教師の命令には従うしかない。
生徒の一部が突然、指名されて壇上にさらされ、残りの生徒は壇上の生徒1名を選ぶように強制された。
その結果、特定の生徒に投票が集中した。


担任教師が何を考えてこのような突発イベントを発生させたのかは、未だに分からない。
だが、なんとなく今では理解できることがある。それは、特定の一部の人間だけが持つ「カリスマ」というか、「魅力」というか、そういったものが、確かに存在しているということだ。担任教師は、自分なりの判断で、そういった生徒だけを選んだようにも見えなくもない。あるいはわざと魅力の乏しい生徒を選んで混ぜて教壇に上げた可能性もある。


ここからが本題である。このとき、自分も7名の中の1名として壇上に登らせられたのだ。


投票結果はたった2票だった。「35分の2」である。7名の中ではたぶん、最も低い得票数だったと思う。


理由は良く分からなかったのだが、この投票結果を見せつけられたときに、とても恥ずかしい気分になったのを覚えている。
粗く言ってしまうと、「辱めを受けた」と感じたのだ。
今から考えると自分のプライドの高さにあきれてしまう。
しかし中学生、しかもまさに中学二年生であり、「中二病」の真っ只中である。
自己弁護に過ぎないが、14歳では致し方ないとも言える。


重要なのは、このイベントによって引き起こされたトラウマが、自分の生き方を決定付けてしまったことだろう。
それは徹底した「マイナー志向」、である。「メジャー嫌い」、とも言える。結果からすると、これはあまり良い性向とは言えなかった。

大学の研究室選びは研究テーマ選びと直結するのだが、電気工学科なのに、光を研究テーマとする研究室を選んでしまったり。
工学部卒業者は製造業に就職するのがメジャーなのに、わざと出版社の雑誌編集部を希望してしまったり。
その雑誌編集部でも記事のテーマやカバー分野は常にマイナーあるいはニッチと呼ばれる分野だったり。
プロ野球の応援チームはずっとパ・リーグでしかもオリオンズ(今はマリーンズだったかな?)だったり。
小説はたくさん読んだけどベストセラー本はまったく読まないで、もっぱらサイエンスフィクションだったり。
クルマよりもバイクを愛好したり。


まあキリがない。そして親が水商売(飲み屋経営)でさんざん苦労していたので「絶対にならない」と思っていたマイナー職業。
すなわち自営業者になってしまったり。若いときには「一生サラリーマン(給与所得者)」というメジャー人生を誓っていたのに。
嗚呼。それも台無しになってしまっている。
なんということだ。結局、親と同じロードマップではないか。いや職業は違うけど。


最近はでも、覚悟ができている。結局のところ、自分は「35分の2」なのだと。
14歳のあの不可解な出来事は、ある意味、真実を自分に伝えてくれたのだと。
それは35名の中で2名は自分を支持してくれたということ。決してゼロではない
ゼロだったらたぶん、自分はグレていたのではないか。

クラスメートの中で自分に投票してくれた人間はゼロではなかった。2名もいたのだ。
視点を転換してみると、これは非常に大切なことだ。
たった2名に過ぎない。でもゼロではない。ここが重要だ。35分の2は、70分の4だ。
4%強の支持というのは、政治の世界における野党の支持率としてみると、かなり高い(爆)。
そのように見えなくもない。単なるこじつけだが。


2名の投票があったことは、ずっと自分の支えになってくれたような気がする。
誰かの支えがあれば、なんとかやっていける。そんな気持ちで毎日を、生きている。