Electronics Pick-up by Akira Fukuda

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愛国心と郷土愛とお役所仕事

「お役所仕事」は、「怠慢」や「サボタージュ」といった言葉と同じ意味で使われることが少なくありません。この意味は都会になればなるほど、ひどくなるように思えます。


え、良く分からないって? そうですね。少し説明します。


まず、官庁から行きましょうか。官僚すなわち国家公務員は日本人です。在日外国人がゼロとは言いませんが、官僚の99.9%以上は日本人でしょう。日本人だから日本の現在を考え、将来を考え、国益のために尽力し、働く。「国益のために働く」のは「愛国心」の一表現とも言えます。例えば米国連邦政府の職員が米国の国益よりも日本の国益を優先したら背任行為ですよね。その前提となるのは、米国政府の職員のほとんどが米国人であることです。まあ、もちろん日本人だから日本の国益のために働く、と直結する論理には飛躍がありそうですけれども、日本人で日本に住んでいるのだから日本の現状を自然に知っている(全部ではないにしても)、というのは重要です。


まだ分かりづらいって? そうですね。もうしばらくご辛抱くださいませ。


次は地方自治体です。例えば北海道庁北海道庁の職員のほとんどは北海道出身者です。ほかの地方から北海道庁に就職して北海道に移住しようという人もいることはいるでしょうが、ごくごくわずかでしょう。それに北海道以外の都道府県から、北海道庁および支庁に通勤することはほぼ不可能です。必然的に北海道の住民になるわけです。北海道の住民ですから、郷土愛は北海道に向けられます。郷土愛などない、という人でも、自分の住んでいる地域の住み心地を良くしたいというのはごく普通の心情ですから、北海道庁の職員は北海道のために働いているという論理が簡単に成立します(現実にはそうでない局面があるかもしれませんが)。


ところが、東京都庁大阪府庁の場合はどうなるでしょうか。東京都庁の職員は、埼玉県や千葉県や神奈川県などに住んでいても、十分に通勤可能です。東京都庁の職員は東京都住民のために働くのが建前ですが、職員の郷土愛は東京都に向かうとは限りません。仮に茨城県に居住しているとしたら、郷土愛は茨城県に向かうでしょう。大阪府庁職員でも、奈良県に住んでいたら、郷土愛は奈良県に向かうでしょう。奈良県民の郷土愛が大阪府に向かうはずがありませんし、期待してはいけないでしょう。


もっと重要なのは、勤務時間内だけしか、他県居住の職員は東京都や大阪府に存在しないことです。東京都職員が茨城県に住んでいたら、夜間や早朝の東京都の様子(例え一部だとしても)が分かるはずもありません。東京都は単なる勤務先で、自分の居住地を良くしていこうという動機づけは存在しない。そんな職員に、東京都に住んでいるあなたは、「お役所仕事」以上のものを期待できますか。


もちろん、東京都職員には東京都在住の方が少なくないと思います。ただ問題は、他県在住者が例えば半分を占めたら、それで東京都住民のために都庁が良く働いてくれるとはとても期待できないということです。極端なことを言えば「出稼ぎ集団が半分を占めている組織」には、多くを期待できません。期待すること自体が間違っているとも言えます。


こういった「出稼ぎ役人」現象が最も極端に出ているのが、東京都23区、それも都心部の区役所だと推測しています。千代田区、港区、文京区、中央区、新宿区あたりの区役所職員は、当該区民が確実に半分以下、ひょっとすると2割以下ではないかと考えています。8割が通勤で区役所(および出張所)に通ってきている「出稼ぎ役人」だとしたら、地域住民のことなど、区役所職員が分かるはずもありません。


これはなかなかに危ないことだなあ、と思っていたら、トピックスとなったのが「消えた高齢者」問題です。7月29日に足立区で30年以上放置されていた111歳の高齢者遺体が見つかったことが始まりでした(http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/100729/crm1007291258012-n1.htm)。ここで重要なのは足立区の職員が足立区民だとかそうではないとかいうことではなく、「民生委員」が実質的に地域情報の収集役となっていることです。


民生委員は、厚生労働省の管轄にあります。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/seikatsuhogo/minseiiin.html
民生委員とは「厚生労働大臣から委嘱され、それぞれの地域において、常に住民の立場に立って相談に応じ、必要な援助を行い、社会福祉の増進に努める方々であり、「児童委員」を兼ねています。」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/seikatsuhogo/minseiiin01/04.html


民生委員の任期は3年。無給です。要するに地域奉仕活動ですね。
民生委員の相談分野の半分は高齢者に関することが占めています。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/seikatsuhogo/minseiiin01/qa03.html


最も大切な現場の部分がボランティアにまかされている。これがお役所仕事の現場、現実です。


でもって。都市部の役所では、もう少し出稼ぎ役人の数を減らして「地元採用枠」を設けたら、少しはマシになるんじゃないだろうか。町内会が機能している地域もまだあるし、役所が町内会と連携しようにも昼間だけじゃ会合にも不便すぎます。


民生委員の報酬化は・・・難しそうですね。厚生労働省管轄の民生委員が市区町村の窓口への連携役になっているという構図がそもそも何かおかしいというか。しかも民生委員の指導監督は都道府県知事だったりするし(http://www.mhlw.go.jp/bunya/seikatsuhogo/minseiiin01/qa04.html)。ねじれてます。


(おまけ)

今、国勢調査が始まりつつあります。国勢調査員は無報酬ではありませんが、少額の報酬(50〜60世帯で3万9000円)でボランティアに近いとも言えます(http://www.city.shibuya.tokyo.jp/news/oshirase/kokuseityousa.html)。
によって支えられています。しかし世帯人数の減少により、昼間は無人の世帯が東京では相当数に昇っています。訪問の手間の増加が著しく、すでに「二度とやりたくない」との声を聞いています。5年後には危機的な状況になりはしないかと少し心配です。