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【推薦!!】「寄生獣」の岩明均氏が放つサスペンスSFの傑作「七夕の国」


岩明均氏の作品寄生獣は 一度は読まないと「漫画好き」を名乗れないくらいの大傑作であり、あまりにも有名です。判型を変えて何度も新装刊が出ています。kindle版もあります。


その岩明氏が「寄生獣」(月刊アフタヌーン連載)の完結後に上梓したサスペンスSFの大傑作が「七夕の国」です。ビッグコミックスピリッツ誌に連載されていました。とても惜しいことに、900ページ足らず、最初の単行本で4巻という短さで完結してしまいました(その後に出た小学館文庫では全3巻です)。


七夕の国 1 (小学館文庫 いK 1)

七夕の国 1 (小学館文庫 いK 1)

小学館文庫版です。


七夕の国 (1) (ビッグコミックス)

七夕の国 (1) (ビッグコミックス)

最初の単行本であるビッグコミックス版です。こちらは絶版になっています。
また最近では、1巻にすべてを収蔵した廉価版が出ています。


七夕の国 (My First Big SPECIAL)

七夕の国 (My First Big SPECIAL)

現在は紙質にこだわらなければ、これが最も安価です。


kindle版は今のところ、ないようです。これだけの傑作なのに電子書籍Kindleで読めないのは不満ですね。早くKindle化して欲しいです。


ストーリーを文章で説明することは、かなり難しい内容になっています。「寄生獣」に比べるとはるかに難しいです。しかし漫画作品としては、「七夕の国」は非常に洗練されており、バタ臭さと迷いのある「寄生獣」に比べると、完成度は高いと思います。

(すみません。以下は内容に触れる部分があります。ご了承される方だけ、お読みください)









粗く分類すると、超能力もの。でもいわゆる「エスパーもの」ではありません。超能力ものと宇宙人ものと、さらに別の要素が入っています。


ある田舎の村(里)を舞台に、戦国時代(?)のエピソードから物語は始まります。その里の住人は古から伝わる「何か」を守り続けています。「何か」が、読者には具体的には明示されません。最初のエピソードでは、住人の一部には特殊な能力があること、その能力が「何か」を守るために備わっていることが分かります。能力がなんであるかも、一応、明かされます。でもよくわからない謎の部分もあります。読者としてはこうなんというか、引きこまれつつ、(謎解きが欲しくて)先が読みたくなる展開です。上手い作りです。


そして舞台は現代へ。とある大学の研究室が舞台です。主人公と思しき学生(苗字から、最初のエピソードに出てくる武士の子孫だと思われる)が、研究室の教授から呼び出されるところが始まりです。主人公は実は超能力者で、超能力サークルの部長をつとめている。しかしその能力の使い道が、主人公には分からない。


ここでうまいな、と思うのは、読者は「その能力が何であるのかが分かっている」ことです。つまり戦国時代(?)のエピソードから、能力のおおよそを読者は掴んでいる。だから、主人公の能力がまだ開花しておらず、非常に微弱なものであると理解できる。すなわち、その後の展開で主人公の能力が強化されることがこの時点で予測でき、わくわくするわけです。展開が読めることによる期待という載せ方に感心しました。


そして研究室の教授の苗字が、分かる人には分かるという展開。しかも当の教授は失踪していた。謎の言葉を残して。残された研究室の講師と研究生が、主人公とともに教授を探して動き回る展開となります。講師(女性)が教授(男性)と不倫関係にあるらしいとか、研究生が教授に頼まれて作っている模型(里の地形図)から地形が不自然であるとか、就職活動が大変だとか、本筋と関係があるのかないのか分からない情報を交えつつ、大学4年生が事件に巻き込まれていく様子がリアルに描かれています。


問題の里をたずねる主人公と研究室のメンバー。そこで出会う村人の態度や行動などがまた不自然で、あやしい。ところが主人公の苗字を聞くなり、豹変する村人たち、なのです。その苗字は特別な意味を持っているらしい。村人たちは主人公を大歓迎します。理由がわからずに戸惑う一行ですが、なんと村人は主人公に里に住んでほしいとの意向すら出してきます。


謎は少しずつ明らかになりつつも、新たな謎が出てきます。飽きさせない。展開が上手い。とってもスリリングです。里を出たらしい超能力者が事件を起こすことで、面白さが増しています。


前半の展開に比べると、後半、とくにラストのあたりは、連載が打ち切りになったことを伺わせる忙しさです。人気が出なかったのでしょうか。それも分かります。この作品は連載の途中からだと、何だか分からない。最初から読まないと入りこめないという弱点があります。忙しい後半ですが、謎が次々と解かれていく展開は、すんごいカタルシスです。タイトルの「七夕の国」はラストになって明かされます。


惜しむらくは、いくつかの謎を残したまま、物語が完結してしまうこと。わざと謎のままにしたのか、それともページ数が足りなかったのか。このため、読了してもモヤモヤ感が残ります。「窓のむこう」には何があるのか。なぜ能力を使うと、身体の形状が変化していくのか(身体が宇宙人の形状に近づいていくことを伺わせるのですが、理由が分からない)。能力を使い続けて行くと、最後はどうなるのか。


それでも着想は素晴らしい。展開は言うことなし。読者を最終ページまで牽引するベクトルに溢れています。4巻(あるいは3巻)と短いので、全巻そろえて読んでもそれほど時間が取られるわけではありません。


漫画好きなら、「寄生獣」の次は「七夕の国」が必修科目です。もちろん逆の順番でも。強くお薦めします。