- 作者: 伊勢ともか
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2014/08/18
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タイトルに「懲役339年」とある通り、339年の懲役刑を受けた極悪大犯罪人が主人公。しかしヒトはふつう、339年も生きたりしません。それでも339年の懲役刑を執行させる仕組みが、この世界にあります。その独特の世界観とドラマの面白さでぐいぐいと作品世界に引き込まれます。
(以下は第1巻の内容に少しだけふれています)
独特の世界観とは、「魂の転生が信じられており、転生先が分かる社会であること」です。この社会では、初代の大犯罪人が死んでも、転生した人間(2代目)が懲役刑の刑期を引き継ぐのです。
作品が描いている社会は現代日本よりも文明的には遅れており、社会全体が貧しい。刑期をまっとうするための刑務所の施設環境はたぶん、日本の刑務所よりも劣悪です。このため、かなりの若年で代替わりした犯罪人は死んでいきます。
でも初代はともかくとして、2代目以降の人間は犯罪をおかした訳ではありません。あくまでも「前世の犯罪」を償うために、たぶん一生、刑務所で暮らすことになります。前世の犯罪。このことに疑問を抱いた刑務官の登場が、ドラマの始まりです。
一方でこの社会は「前世がどのような人物であったか」が地位を左右する社会です。本人の努力とは関係ないところで、人生が決められてしまう。この二つの矛盾が、読者に葛藤を引き起こし、主人公に対する感情移入を促しています。見事な仕掛けです。
第1巻では、第1部、第2部、第3部で構成しています。第1部は2代目が主人公、第2部は3代目が主人公。それぞれ性格も肉体も人生もまったく違います。同じなのは、刑務所で一生を過ごす、ということだけです。それなのに人生の中身はあまりも違う。そして悲しい。
第3部からは、物語が連載になったらしく、第1話から第7話までが収録されています。主人公は4代目。しかも初めての女性。看守(男性)と主人公(女性)の周囲で起こるドラマが描かれます。この社会を規範する「転生」の謎の一端が現れるのですが、まだ解かれないままで残ります。国境に近い刑務所は、隣国との紛争悪化によって翻弄されます。ついに決断する看守と主人公。その行方を読まずにはすませられません。
一読をお薦めします。