Electronics Pick-up by Akira Fukuda

日本で2番目に(?)半導体技術に詳しいライターのブログ

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日本企業から失われつつある「おもてなし」のこころ

お客様とは誰のことでしょうか。商品を購入してくれる人がお客様。間違ってはいません。でも、「商品を購入してくれる人だけがお客様」というのは間違いでしょう。

「お客様」というのは「自分のところに足を運んでくれた人」という意味も含んでいると理解しています。時間(というコスト)と交通費をかけて、自分のところまで来てくれた人、ですよね。自分はどこにも動かずに、相手が到着するのは待っているだけ。時間も交通費も払いません。


そのようなお客様(顧客ではなく、来客)に対し、かつての日本企業(1970年代〜1980年代)はどこでもそれなりのもてなしで迎えてくれました。冬は熱いお茶で、夏は冷たい麦茶で。出入りの業者にアイスコーヒーやジュースなどを注文してふるまってくれる会社もありました。

これに対し、外国系企業は日本企業に比べるとややドライというか、そっけないもてなしが多かったように記憶しています。ペットボトルの水だったり、オフィスに備え付けの自動販売機のソフトドリンク(紙コップ入り)、オフィスのメーカーで入れた紙コップのコーヒーあるいはお茶だったりしていました。

ところが。1990年代に入り、日本経済バブルが崩壊し、2000年代に入り、ITバブルが崩壊し、景気が悪化すると、日本企業が出すドリンクは外国系企業と変わらなくなってきました。


そして2008年秋のリーマンショックリーマンショック以降になって日本企業のおもてなしは極北に達しました。何も出ないところが珍しくなくなったのです。取材でも、原稿の打ち合わせでも、記者説明会でも。何も出ません。ノードリンクです。乾いてます。

一方で外国系企業の日本法人オフィスは、リーマンショック以降も昔とあまり変わりません。ペットボトルの水だったり、紙コップのコーヒーだったりですけど、ほとんどの企業では何らかのドリンクが出てきます。現在の東京では、来客に対するおもてなしは粗く評価してしまうと「外国系企業>>日本企業」であると言わざるを得ません。


業績が思わしくないから、経費削減を強化しなければならない、という事実は理解します。しかし「来客に対して何も出さない」というのは行き過ぎだし、マナーに反する行為だと感じます。外国から来たお客様(顧客ではありません。訪問者という意味です)に何も出さないなんて失礼は、私には許容しがたいことです。そして日本企業に入社した新卒社員は、「来客に対して何も出さない」という社内教育を暗黙に受けることになります。これもなかなかに怖いことです。

日本人であれば、誰でも名前を知っているような大会社なのにノードリンク。むしろ中小企業の方が、昔ながらの熱い緑茶で迎えてくれることが少なくないです。日本の伝統的大企業でのこのふるまい。何か間違っているんではないでしょうか。


ところで最近の私は、外出のときにはペットボトルの水を持ち歩いています。水が飲めないと取材にさしつかえるんですよね〜。