Electronics Pick-up by Akira Fukuda

日本で2番目に(?)半導体技術に詳しいライターのブログ

「ウォーターエネルギーシステム」のTech-On!報道記事が異例の反響を呼んでいました(そのさん、あるいは蛇足)

(そのいち)はここです
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(そのに)はここです
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参考情報:はてなブックマーク
http://b2.hatena.ne.jp/entry/http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080613/153278/


今回の騒ぎを契機に、「Tech-On!」というメディアについて改めて考察してみました。
キャッチコピーは「技術者を応援する情報サイト」です。
どういった方々が作っているのか。編集を含めた全スタッフのリストがこちらにあります。
http://techon.nikkeibp.co.jp/guide/staff.html


Tech-On!の編集記者は、大半が「日経エレクトロニクス」や「日経マイクロデバイス」などの編集記者が兼務していることが分かります。

今回、不幸にも? 曝されてしまった狩集浩志記者はTech-On!では「カーエレクトロニクス」サイトのマスターと日経エレクトロニクスの編集記者を兼ねています。サイトマスターですから、「それなりの見識が求められることは当然でしょう。


同記者は日経エレクトロニクスのブログでは下記のような内容を書いたりしています。

「オモシロ発電が今後の注目株?」
http://202.214.174.10/article/TOPCOL/20080424/150986/
この内容から気になるのは、一種の無邪気さです。波力発電は覚えている限り1960年代から存在していたと思います・・・というところで検索したらすぐ引っ掛かりました。
http://www.glocom.ac.jp/eco/esena/resource/hirose/
上記資料によると1965年に開発とあるので、ほぼ合っているようです。
でもってブログは波力発電に関する過去の実績にはふれていません。
川底の羽根車にいたっては「水車小屋」の発電器のことです。
それをさも珍しいことのように紹介していることにジャーナリストとしての違和感を感じます。


私はジャーナリストに必須の資質は「疑り深いこと」だと思っています。
相手の言うことはきちんと聞きますが、信じているわけでは有りません。
相手の言うことをそのまま信じるのでは、ジャーナリスト失格です。
藤堂氏は曝された記事のコメント欄で記者が有する技術知識の重要性を説いています。
そのことには異論はありませんが、使い方に問題があります。
記者は「相手の嘘を見抜くために」技術知識を活用するのです。技術的に正しい記事を書くことも重要ですが、最も重要なのはペテンに引っ掛からない(白い嘘にだまされない)ことだと信じています。


技術知識の深さでは、取材先がエンジニアの場合は勝負になりません。最初から負け、です。
でも物理的、化学的、電気的につじつまが合わない説明を見つけることは可能です。
今回の記事に限らず、Tech-On!の記事に感じるのは、記者発表の内容に対して記者が受け身になっている、ということです。理解するだけでせいいっぱいなのかな、とすら思ってしまいます。


Tech-On!の記事の大半がかなり短いことも気になります。記者発表の内容のほんのわずかしか書いていないことが多い。同じ記者発表からIT系PC系のウエブマガジンに書かれた記事と比べると、内容が極めて乏しい。勝負になりません。今回のGIGAZINEほど物凄くはなくても、発表スライドや展示会の展示物写真を数十点ほどずらっと並べる、なんてPC系ウエブマガジンではもはや当たり前です。


重要なのは、写真を数十点ならべ、動画をアップし、膨大な文章でたたみかける記事がウエブマガジンでは主力となっていることです。さらに重要なのは、ウエブマガジンを読み付けている方にとってはそれ(写真、動画、長い文章の記事)が普通だという感覚です。


日経エレクトロニクス日経マイクロデバイスなどの有料雑誌と違い、Tech-On!は(登録すれば)無料で誰でも読めます。技術者といっても、非常に広い範囲の職種と業種が読者です。理工学部の教養課程までが共通の土台といったところでしょう。にもかかわらず、例えば日経エレクトロニクスの記者は日経エレクトロニクスのスタイルでTech-On!に急いで短い記事を書いているように見受けられます。そして今でも、日経エレクトロニクス方言が残っている。タイトルの中を「」でくくるのは揶揄するとき、という意味だと私は解釈できますが、一般の読者にはたぶん通じていません。「・・・という」という表現は相手の言っていることを疑っているときの表記法なのですが、これもTech-On!の読者には通じないでしょう。いや、日経エレクトロニクスでも通じているかどうかは怪しそうです。


しかも、Tech-On!の記事は総じて拙速なのです。雑誌が存在することによる、甘えが感じられます。編集記者の言動からは、PC系ウエブマガジンをバカにする傾向も少し感じます。


とんでもないことです。このままでは、Tech-On!はPC/IT系ウエブマガジンには絶対に勝てないでしょう。今でも大手ウエブマガジンに比べたら、Tech-On!の月間PVは10分の1〜20分の1くらいに過ぎないんですよ。PC系ウエブマガジンのパワーはものすごいものがあります。半導体ベンダーでは記者発表会の連絡リストにPC系ウエブマガジンを入れるところがどんどん増えています。


真剣にPC系ウエブマガジンから、学んで欲しい。現在のTech-On!に切に望みます。