- 作者: 西村章
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2011/03/16
- メディア: 単行本
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オートバイ、すなわちモーターサイクルの世界的な大手メーカーは日本に集中しています。ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキと4社ものメーカーが世界中でオートバイを販売している国はほかにありません。
しかしスポーツの世界では、先進国中で日本ほどモーターサイクルが認知されていない国は珍しい、と言えます。
欧州ではモーターサイクルスポーツは絶大な人気を誇り、トップクラスのライダーは社交界に出入り可能なエグゼクティブの扱いを受けます。欧州出身の将来有望なライダーには、欧州のスポンサー企業が続々と付いてきます。特に盛んな国はスペインで、ロードレースの最高峰であるMotoGPのレースが年間に3回も開催されます。
ところが日本では。モーターサイクルスポーツの世界を目指す若者はそれほど多くなく、モーターサイクルを支援する企業はバイクメーカーやバイク部品(タイヤやスパークプラグなど)メーカーを除けば皆無に等しい状況です。
日本のライダーには世界で闘う力がないというわけではありません。例えば全日本選手権250ccクラスで年間優勝したライダーのほとんどは、世界(MotoGPを含めたWGP、すなわち世界グランプリ)で素晴らしい成績を残しています。冬季陸上スポーツの華であるフィギュアスケートで日本が世界レベルにあり、全日本選手権の優勝者は世界トップクラスのスケーターであることをご存知の方は少なくないでしょう。二輪ロードレースの全日本選手権とは、それに近い状況といえます。技量としては。
しかし、ロードレースを闘うチームのほとんどは欧州企業が主体のチームです。日本人ライダーは技量はあるのに、経済力がない(スポンサーがつかない)のです。レースチームの運営には、年間に何億円もの費用がかかると言われています。ですからチームとしては、お金を引っ張ってくれる欧州出身あるいは米国出身(米国も日本に比べるとスポンサーが付きやすいです)のライダーを歓迎します。
このため、日本人ライダーは実力があってもチームと契約できなかったり、契約できてもセカンドライダーに甘んじさせられたり(例えば最新型のマシンを提供されないなど)、といった苦境に陥っています。
そんななか、2009年に世界グランプリ(WGP)の250ccクラスで年間優勝を遂げたのが、日本人ライダー、青山博一(あおやま・ひろし)です。この快挙を年間シーズンを通じて丹念に追ったルポルタージュが、本書です。
この本はモータースポーツを良く知らない方にこそ、呼んで欲しいと強く願います。なぜなら、日本のモータースポーツが置かれた現状が本書を読むと理解できるからです。世界で闘う日本人がこれほどまでに不遇をかこっている現状を、少しでも多くの人に知って欲しい。そして日本の大手報道機関がこれほどまでにモータースポーツに無関心な現状を、知ってください。
すべては、知ることから始まります。どうか本書を一人でも多くの方に。
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