Electronics Pick-up by Akira Fukuda

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原子力を推進する全日本チームの足跡が分かる本「原子力年鑑2011年版」

日本原子力産業協会が監修して毎年1回刊行される、原子力推進側の年鑑です。
同協会の会員は企業だけでなく、地方自治体にもおよび、全日本原子力チームのメンバー表のようにみえます。


原子力年鑑〈2011〉

原子力年鑑〈2011〉


2010年10月発行。福島原発事故の前です。「国家成長戦力の表舞台に」(原子力がなろうとしている)といった威勢のよい見出しがならんでいます。政府・民主党が2009年12月に策定した新成長戦略で原子力推進の姿勢を打ち出したことに対する喜びがみてとれます。

本書は定価1万5000円プラス消費税。むちゃくちゃ高価な本です。それなのに、発行元である日刊工業新聞社の書籍広告は入るは、巻末には原子力関連企業の広告がずらっと並ぶは、なのでとても高価な書籍という印象はありません。

内容は第1部が日本の原子力をめぐる過去1年間の動向、第2部が海外の原子力をめぐる最近の動向、第3部が年表(1895年〜2010年)といった構成になっています。記述は体系化されておらず、読みにくいです。文字が大きく、高齢者に配慮したものと思われます。その分、ページ数の割に内容が少ないです。


いいかげんな記述もあります。「プルサーマルが1960年代からヨーロッパで始まっており豊富な実績がある」(p.59)とあるのですが、これだけよむと1960年代から商業運転が始まっていると誤解してしまいます。実際にはプルサーマルの商業運転は1980年代に始まっています。フランス、ドイツ、ベルギー、スイスの4カ国が商業運転の実績を有しています。イタリアとオランダとスウェーデンは実証試験だけで商業利用には至っていません(2007年末現在。資源エネルギー庁のパンフレット「わかるプルサーマル」に記載およびPDF(http://www.enecho.meti.go.jp/genshi-az/pamphlet/pdf/wakaru_pl.pdf)。なお資源エネルギー庁は現在、PDFをこのURLから削除している)。


バイアスがかかっていると理解した上で、推進側が何を考えているのかを読み解くのには、参考になる本です。しかし・・・この内容で1万5000円とは。それで年に1回ずつ発行されてきたとは。これを買うんですか。推進側はお金持ってますね。

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