Electronics Pick-up by Akira Fukuda

日本で2番目に(?)半導体技術に詳しいライターのブログ

EETimes Japanオンライン版記事「PRAMに思わぬ落とし穴」に重大な誤訳が発覚

エレクトロニクス業界誌EETimes Japanのオンライン版記事「PRAMに思わぬ落とし穴、高温下でデータを保持するには」に重大な誤訳があることが発覚しました。
記事のURL:
http://www.eetimes.jp/news/3563


問題となっているのは下記の部分です。
「この問題に気づくまで、Cappelletti氏は、「PRAMは、85℃の環境下でも、10年間データを保持すると保証できる」と述べていた。しかし、後になってPRAMを85℃の環境に置くと、データを保持できなくなることが判明した。」


原文の記事の表記は下記のようになっています。
原文記事のURL:
http://www.eetimes.com/showArticle.jhtml;jsessionid=OAY5CXJXGPQZBQE1GHOSKH4ATMY32JVN?articleID=222001684
原文記事の表記(太字は筆者注記):
"There is no issue that we can guarantee 10 years endurance at 85 degrees C," said Cappelletti, before acknowledging that the conventional phase-change memory has problems with bits resetting when a memory is held at higher temperatures for extended periods. As the temperature goes above 85 degrees C the data retention drops off significantly.


この原文ですと、「85℃を超える温度」でデータ保持時間が急速に下がっていくという意味になります。ところが、日本語版のEETimes Japan誌では、「85℃の環境に置くとデータを保持できなくなる」と誤訳されています。この記述は記事の根本に関わるところです。


関連して問題となるのは、タイトルがねじ曲げられていることです。原文記事のタイトルは
"Numonyx could add refresh to PCM to beat the heat"
なので、「ニューモニクスはPCMの熱問題をリフレッシュの追加で解決へ」です。
しかし日本語版EETimes Japan誌のタイトルは前期の通り
PRAMに思わぬ落とし穴、・・・」
となっており、ニューモニクスが熱問題に気付いていなかったかのような表記がなされています。


実際にはニューモニクスは、相変化メモリ(PRAMあるいはPCM)の温度特性をかなり前から把握しており、データ保持時間の温度特性をホームページで公表しています。
http://numonyx.com/en-US/MemoryProducts/PCM/EAP/Pages/default.aspx
あるいは
http://www.numonyx.com/jp/MemoryProducts/PCM/EAP/Pages/join.aspx
上記URLで登録すると、テクニカルペーパーをPDFで入手できます。誰でも。

http://numonyx.com/en-US/MemoryProducts/PCM/EAP/Documents/PCM%20Technology%20Overview.pdf
そこには温度特性に関するスライド(トップに掲載)があります。遅くとも今年の8月にはこのペーパーは公表されていました。
ですから、EETimes(英文)の記者はこのスライドを見たうえで、「85℃を超える高温では使えなくなるけど、何か解決策はあるのか」とたずねた可能性があります。
そして日本語版EETimes Japan編集部はこのスライドを知らずに、誤解してしまった可能性があります。このスライドを知っていれば、日本語記事のようなニュアンスは出ないでしょうから。


もっと言ってしまうと。85℃でのデータ保存特性を問題にするのは産業用および自動車用です。半導体バイスの使用温度範囲は普通、0〜70℃なんですよ。データシート見ればすぐに分かります。そして使用温度範囲を広げたバージョンが例えば、マイナス40℃〜プラス85℃となります。


ですから、85℃で仮にデータ保存期間が10年未満だったとしても、通常の半導体製品としては信頼性保証の問題はないんです。70℃で10年持たなかったら困りますが。


本当に心配なのは、EETimes Japan誌の記事からは、上記のような「半導体製品の使用温度範囲の常識」を知らないように見受けられることです。大丈夫なんでしょうか。


【追記】
記事のURL:
http://www.eetimes.jp/news/3563
後で気付いたのですが、上記ページ右上の四角いローテーションバナー広告にNumonyxが入っています。
Numonyxさん、太っ腹ですね。