Electronics Pick-up by Akira Fukuda

日本で2番目に(?)半導体技術に詳しいライターのブログ

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無自覚な暴君と付きあえるのか(おまけ)

まだ書き残しがあった。もうしばらくお付き合いいただけると有り難い。


某社某局広告の依頼で手掛けた仕事の中で、たぶん最も粗雑だったのが、2006年7月に始まった某半導体ベンダーの広告シリーズ企画だろう。この仕事に絞って経緯を説明したい。


半導体ベンダーは外資系で、日本法人で独自の広告企画を手掛けるのは初めてだった。このため、海外本社からの許可を取るために、かなりしんどい思いをしていたようだ。すなわち、連絡や決済などが滞っていた。そして日本でメディア広告を展開するのは初めてなので、勝手が分からないことが事態をより、複雑にしていた。


この結果、某社某局広告の担当者は、某半導体ベンダー担当者とのやりとりに、相当な時間を奪われ、しかも神経を磨り減らしていたようだ。この点は同情するし、理解できる。
しかし、待遇面の問題は別だ。前にも述べたが、兵庫県片道4時間の行程で交通費以外の手当は一切出ないという条件はいかがなものか。担当者の忙しさとは別の問題だ。


そしていかに多忙であろうとも、外部にしわ寄せを与えてよい、ということにはならない。
取材日程がくるくる変わった。2日前にキャンセルになったりした。
そして最初の取材を迎える。しかし、質問リストが届いていなかった。事前に送られていたのは、別のテーマのものだった。そこで取材テーマのものを送るよう、電子メールで要請した。しかし、取材当日にも返答はなかった。


取材の集合時刻は午後3時だった。広告担当者M2氏は、電子メールで時刻表を送ってくれていた。電車で1時間ほどの距離のところだ。集合時間の30分前に到着する列車だった。これは当然である。遅れては非常にまずいことになるからだ。


取材当日、自分は集合時刻の1時間ほど前に現地に到着した。しばらく雑用をして時間を潰した。集合時刻の30分ほど前になり、カメラマンが現れた。顔なじみだったので雑談したりしていた。
そこに別の一団が現れた。3名ほどのグループである。カメラマンは知己のようだった。
このグループは、自分の取材と同じ時間帯に、求人広告を作るための撮影をするチームだった。広告代理店とカメラマンのグループである。
これには大変に驚いた。同居撮影のことは、事前にまったく知らされていなかったからだ。取材後のやりとりから察するに、「ライターには知らせなくてもよいこと」に分類されていたらしい。広告担当N氏は、取材後のやりとりで、取材中の私の態度がなっていないと怒りを露にした。「われわれはチームなのにその態度はなんだ」。チームというからには、求人広告制作撮影のことは事前に知らせるべきだろう。モノ扱いしておいて「チームの一員」としての義務を求めるのか。


「態度がなっていない」のは本当である。自分の落ち度だと思う。理由は「質問リストなし」でぶっつけ本番で取材をやらされたからだ。なぜこうなったのか。某社某局広告の担当者M2氏とN氏が二人そろって遅刻したからだ。それも集合時刻ではなく、取材開始時刻に対して遅れたのだ。彼等が集合時刻に到着してくれたならば、自分は質問リストの未着を告げ、急いで質問概要を打ち合わせることができた。ところが、彼等が遅刻したことによって緊急パッチの目論みがぶち壊しになってしまった。


しかも。遅刻到着してバタバタで取材が始まったため、私はM2氏に質問リストの未着を改めて告げられなかったのだ。あれよあれよという間に取材開始となり、M2氏は私に質問を促した。私は戸惑うばかりである。さすがにムッとして質問リストが未着であることをはっきりと告げた(このときの私の態度がN氏にはカチンときたらしい。M2氏に恥をかかせたことになるからだろう)。この段階に至って、自分の質問リスト催促メールがM2氏に伝わっていないことと、M2氏はとっくに質問リストを送っていた気になっていたことを理解した。そしてM2氏は、質問リストが私に届いていないことを認識してくれたのだ。ようやく、M2氏が質問リストを私に渡した。ここで初めて質問リストを見ることになる。まったくもって酷いことだ。


当然のごとく、取材は散々に終わる。取材後のやりとり(反省会?)は険悪な雰囲気だった。N氏は私の態度が悪いと怒り、私は遅刻は言語道断と強く抗議する。
そして私がこの広告企画から降ろされるのは、前に述べた通りである。
こういったことがあっても、怒らず、騒がず、恥をかかせず、淡々と仕事をこなしていくライターが求められるようだ。


職人肌のライターは総じて広告仕事を嫌う。結果としてライターの平均的な品質は低下する。そして記事体裁広告の原稿品質は上がらないし、はっきり言って低い。当たり前だ。求められるものが違うのだから。ライターに求められるのは高品質の原稿(あんまり酷い品質だとさすがにまずいが、一定以上は求められないのも確か)ではなく、顧客のいいなりになることなのである。


といっても広告業界全体が、というのではない。競合他社(出版社)や広告代理店、企業広報などとも私は仕事をしている。紳士的に対応してくださるお客様も少なからずいらっしゃる。粗雑な取り扱いが生じて抗議したときにも、いきなり降ろすようなことはせずに、真摯に対応して改善していただけた。本当にありがたいことだ。


これに対し、某社某局広告の粗雑さは突出していた。
競合他社(出版社)や広告代理店、企業広報などの仕事では、これほど悲惨な事例はなかった。


それでも某社某局の広告が強いのはなぜなのか。企画力がずば抜けていることだ。新しい商品を企画し、開発する力は群を抜いている。競合誌では現状、力が及んでいない。長年培われてきたブランド力がまた強い。またインターネット連携でもかなりの優位性がある。
結局、魅力ある商品を継続して開発できれば、そのほかのことは小さな問題として埋もれてしまうのだろう。