Electronics Pick-up by Akira Fukuda

日本で2番目に(?)半導体技術に詳しいライターのブログ

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間違いだらけのツール選び

久々に突っ込みだらけの記事を読んでしまいました。
日経エレクトロニクス2007年3月12日号69ページ
「低価格デジタル・オシロスコープ
(コラム名:)迷わないツール選び
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/HONSHI/20070307/128539/


この記事はまず、以下の前提が分かっている方が読む必要があります。
デジタルオシロによる波形観察は、アナログオシロによる波形観察と併用すべきであること。


この記事は、デジタルオシロがあれば、アナログオシロは不要だとの印象を与える危険性があります。アナログオシロが不要だとは書いてありませんが、アナログオシロの存在を無視しています。記事本文には「例えばデジタル・マルチメーターで電圧や電流の値を測り、信号波形をデジタル・オシロスコープで観測するといった使い方を想定する」とあります。そして信号波形観測では昔はアナログオシロを使っていたが、「波形の画像データを使い報告書を作成したり、測定データ(注:何のことか不明)を元に作図したりする機会が増えたことにより、こうした作業に適した低価格な据置き型デジタル・オシロスコープを求める声が増えたという」(本文70ページ右段より)。


これだけです。困ったので、強く主張しておきます。
デジタルオシロ、それも低価格品での観察波形はリファレンスにしてはならない」
例えばここをみると、デジタルオシロによる波形観察の落とし穴がすぐ分かります。


明確に本記事がこのこと(アナログオシロによる波形観察の重要性)を指摘しないのはなぜでしょうか。
あるいはアナログオシロは不要だと考えているのでしょうか。
著者の根津禎記者および担当デスクの見解をお伺いしたいところです。


それから、波形メモリとサンプリング速度(標本化速度)の関係についてまったくふれていないのは、デジタルオシロの記事としては貧弱ではないのでしょうか。
信号観測を重視した姿勢ながら、波形更新速度が一覧表でまったくふれていないのもおかしなことです。
手前味噌で恥ずかしいのですが、下記内容には少しでもふれるべきでしょう。
http://journal.mycom.co.jp/articles/2005/04/29/oscilloscope/


続いて各所の突っ込みに入ります。電子技術雑誌の看板を背負っている相手ですから、手加減するとかえって失礼だと思います。直球で行きます。どんどん行きます。


要点から「プリンターやパソコンとの接続性、操作性や視認性の高さをうたう製品も多い」・・・・パソコンとの操作性、パソコンとの視認性と構文からは読めてしまいます。


要点から「こうした低価格・・・応用範囲が広い」・・・応用範囲が広いとは、オシロスコープなんだから当然でしょう。あえて言うからには、具体的な広がりを示すべき。自動車関連のことを言っているつもりなのかもしれませんが、「中でも自動車関連での・・・」と言っており、良く分かりません。


本文69ページ
左段 「機械系の制御信号〜幅広く使える」の文章の意図が不明です。あんまり高くない「速度」の信号観測で使えるという意味でしょうか。


右段 「デジタルマルチメーターやテスタなどと同じように」・・・このテスタはアナログハンディメーターのことでしょうか。「テスタ」では検査用機器一般を指してしまったり、LSIテスタの意味で使われたりします。ここではもっと限定したていねいな言葉遣いをすべきでしょう。


本文70ページ
左段 「・・・増えたという」・・・誰が言っているのか分かりません。それとも伝聞でしょうか。


中段 オシロスコープが代理店でも販売しているって・・・・常識でしょう! わざわざ書くほどのことでしょうか。しかも代理店経由だと割り引き価格で買えると言っておいて、代理店に関する情報(社名や連絡先や価格など)はゼロというのは、ひどい(不親切)です。


右段 ハンドヘルド型の記述で「周波数帯域や標本化速度で据置き型に比べて見劣りする」とありますが、劣っているようなニュアンスはオカシイですね。使い方が違うので、求められる性能も違ってきます。そこのところをきちんと出すべきでしょう。


71ページ
右段 「2チャネルでは、例えばクロック信号とデータ信号を観測できる。その他の信号を同時に観測したい場合は4チャネル品が必要になる」・・・あのー、ふつう、クロックは1本かもしれませんが、データは1本じゃないと思うんですが・・・間違っているでしょうか。その他の信号というのはクロックとデータ以外の信号のことですよね。するとデータ線は1本しかないというふうにも読めてしまうのですが・・・。


テクシオは、ケンウッドティー・エム・アイが2006年12月に社名変更した会社です。社名変更はわりと最近のことです。ケンウッドティー・エム・アイと聞けば分かるけど、テクシオを知らないエンジニアは少なくないと想像します。日経エレクトロニクスの編集記者が社名変更のことを知らないはずがありません。記事中に社名変更のことを注釈等で入れておくべきです。


73ページ
左段 「信号の生データ」・・・生データって何でしょうか。分かりません。何なのか教えてください。


左段〜中段 オシロスコープとプリンタを直結する使い方に22行を割いています。結構重視していることが分かります。ですが、私はこういった直結印刷はあまりやらないと考えています。データをパソコンに取り込み、編集し、プリンタに出力するという手順の方が一般的ではないでしょうか。直接印刷できないことを欠点であるかのように扱うのはいかがなものかと・・・。それからDCS-9500がプロッタ印刷対応とありますが、対応機種と条件が書いていないのは情報として完成度が低すぎるように感じます。


右段 「作製した「マスク」範囲外の信号を検知すれば、製造ラインと止めるといったことができる」・・・冷や汗が出ました。いや、確かに製造ラインを止めることはできますよ、原理的には。でも、実際の製造現場では、マスク外信号検知がライン停止に直結するのでしょうか。ラインの作業者がふつうにやることを記述するべきでしょう。記事の言い回しには、強い疑問が残ります。


74ページ
左段 4チャネル機でチャネルごとのカラーリングするのは上位機種ではテクトロ以外もすでにやってます。ちょっと誉めすぎでは。


とりあえずこのくらいです。ご批判、反論などは大歓迎です。
計測・検査機器の記事品質を高めることに貢献したいと、常に願っています。