IEDM 2016現地レポートをPCWatch誌に掲載していただきました。
最大発振周波数(fmax)が720GHzと高い動作性能を達成したシリコンベースのトランジスタの研究開発成果です。
「光と電波の「テラヘルツ・ギャップ」をシリコンベースのトランジスタが突破」http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/event/1034509.html
「テラヘルツ・ギャップ」とは何か、についてはレポート記事をご参照ください(PV稼ぎのためです。すみません)。
InP系化合物半導体トランジスタですと、すでにfmaxが1THzを超えています。ただし、InP系デバイスだと基本、ディスクリートなんですよね。シリコンCMOSデバイスとは、ハイブリッドの集積化になってしまう。
その点、シリコンベースですと、シリコンCMOSデバイスとモノリシックに集積できる。今回の研究開発成果も、ベースとなっているのは130nmのバイポーラCMOS技術です。バイポーラ部分にシリコンゲルマニウム(SiGe)のヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)を作成しています。そしてSiGe HBTのデバイス構造とプロセス技術を改良し、極めて高い動作周波数を達成しました。
ちょっと面白かったのは、欧州連合の産官学共同研究開発プロジェクトによってこのトランジスタが開発されてきたこと。プロジェクトのウエブサイトを読むと、非欧州のSiGe技術に対抗するために、欧州独自にSiGe技術を開発することが目的だとの記述があります。「欧州独自のSiGe技術」ですよ。非欧州のSiGe技術で超高速となると、米国を指すものと思われます。
でも日本独自の「SiGe超高速トランジスタ技術の開発」はどうなっているのでしょうか。Google検索で「SiGe」、「SiGeトランジスタ」、「プロジェクト」、「研究開発」といったキーワードを使って探したところ、1件が見つかりました。
http://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/fees/purpose/pdf/H21_RD06.pdf
2010年3月末に完了した、総務省のプロジェクトのようです。SiGe高周波トランジスタの項目もあります。その性能は現在から見るとかなり遅い。
最近では見つかりませんでした。残念。