Electronics Pick-up by Akira Fukuda

日本で2番目に(?)半導体技術に詳しいライターのブログ

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日経エレクトロニクスの計測技術大特集


ちょっと古い記事ですがサボり諸事情によりエントリーが遅れました。


日経エレクトロニクス 2007年10月8日号 NEプラス
「機器の競争力を高める実践的計測技術」
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/HONSHI/20071002/140032/
およそ80ページにおよぶ大特集です。NEプラスとはブックインブックの意味で使っているのですが、正直、別冊あるいは小冊子にして欲しいです(何度も同じこといってますね)。この状態だと使い勝手が悪いんですよ。読者専用の無料PDFダウンロードでは月に20ページまでですし。繰り越しても最大40ページ。全然足りません。


そうはいっても、日経エレクトロニクスでは珍しい、計測大特集です。計測展(主催が日経BP社)と広告企画のからみがなければたぶん、実現しなかったでしょう。来年もNEプラスでやるのかどうかについては興味ありますが。


・・・脱線しました。以下は概要です。2)〜6)に用途別計測技術の寄稿があります。著者陣は業界では著名な、そうそうたるメンバーです。


1)「開発者のための計測技術とは:計測は結果より過程が重要、計測の原理原則を理解して製品開発を有利に進める」
著者:伊藤元昭氏 日経エレクトロニクス
寸評:タイトル通りの内容ですが、ところどころ、首肯しがたい記述がみられます。例えば「使える計測技術の数が、開発できる機器の多さにつながります」、「計測技術を知らずに異分野の技術の利用を考えることは、地図とコンパスを持たずに知らない土地を旅するようなものです」など。最初に計測技術ありき、の議論は機器開発における設計技術の本筋とずれていると思います。計測技術者ならば分かりますが・・・・計測技術者は設計者とイコールじゃない。きちんと整理して論じて欲しいところです。


2)「計測現場の動向:相互接続に必要な条件を整理:試験に合格するだけでは“つながる”ことにはならない」
著者:大原稔氏、菅原智貴氏 アリオン
寸評:アリオンhttp://jp.allion.com/about.html)は「試験を受託する企業」(14ページ)と説明にありますが、ホームページを拝見すると、テストプランの作成が付加価値の高い業務というか、面白そうというか、です。内容は規格認証試験と相互接続試験の意義や違いなどの解説です。


3)「民生機器向け試験計測:HDMIの計測技術、消費者の安心感は厳格な計測が作り出す」
著者:小川哲生氏 日本テクトロニクス
寸評:ハイビジョン画質の動画像データを伝送する、HDMIに関する計測技術の解説です。16ページもの大著です。詳しく、しかもよくまとまっています。参考にされる技術者が少なくないでしょう。


3)「無線計測の勘所:Wireless USBの計測技術、法令順守への対応が開発の巧拙につながる」
著者:関野敏正氏 アジレント・テクノロジー・インターナショナル
寸評:Wireless USBの計測技術に関する解説です。無線信号の計測なので相当に難しいことが伺えます。ただ、テスト・スイートがまだ公開されていないので、Wireless USB試験の詳細技術を採り上げるには、タイミングが早すぎるように感じました(この点はアジレント・テクノロジーに責任はまったくありません。テーマを選んだ日経エレクトロニクス編集部の責任事項です)。


4)「試験計測の刷新への対応:Serial ATAの計測技術、馴染み深い手法を破棄してでも見直したい試験基準がある」
著者:辻嘉樹氏 レクロイ・ジャパン
寸評:ハード・ディスク装置で馴染み深い、シリアルATAに関する計測技術の解説です。規格仕様書の改定でアイ・ダイヤグラム試験を義務項目から外し、パラメータ試験を用いることになった経緯を説明しています。面白いです。


4)囲み「プロトコル・アナイザを使ってリンク層の動作を計測」
著者:熊田博康氏 東陽テクニカ
寸評:まず、タイトルですが「アナイザ」は「アナライザ」の誤りです。編集部の校正ミスですね。ここではSerial ATAの実際の計測について解説しています。本論が規格について論じているので、補完する意味合いで囲みを付けたのでしょう。親切な姿勢で好感がもてます。


5)「性能や品質の基準:SDH/OTNの計測技術、公正な性能競争に必要な標準的な計測手法」
著者:石部和彦氏、石山伸記氏  アンリツ
寸評:有線の超高速通信であるSDH/OTNを採り上げています。ジッタとエラーについてきちんと学べます。


6)「計測技術の知識を収集:WWWサイトの有効活用、計測器メーカーの文書を活用して広く深い知識を得る」
著者:伊藤元昭氏 日経エレクトロニクス
寸評:普段から計測器メーカーのウエブ・サイトを拝見している身としてはちょっとがっかりです。「初心者の情報収集」としては私は計測器メーカーのウエブ・サイトにある文書はあまり薦めません。それでも読むとしたら、日系メーカーのウエブ・サイトをお薦めします。アジレント、テクトロニクスとも翻訳が多く、読むのに苦労することが少なくありません。その点、日系メーカーの文書は分かりやすいです。ただ、文書リソースそのものが、日系メーカーはあまり多くないんですね。それと、「探す手間」がすごくかかるのが大問題です。その点では、少ないながらもURL一覧を付けて下さったのはすごく有り難いです。高く評価します。