- 作者: 藤浪修
- 出版社/メーカー: 文芸社
- 発売日: 2005/02
- メディア: 単行本
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全日空(ANA)の元副社長で、整備畑一筋に生きた故・浅倉博氏の生涯を全日空の先輩同僚後輩などが寄稿し、編集した本である。
出版社の編集者が企画して作り上げた本とは違い、追悼本に近い。プロからみると、素人臭さ満載の原稿になっている。読みづらいところもある。
しかし、そんな弱点はささいなことである。関係者だけが知っている、戦後の日本民間航空再開の歴史と全日空の歴史が活写されている。
飛ぶことを奪われた戦後の日本。飛行機野郎達が待ち望んでいた航空業の再開。ほとばしる熱情。圧倒的なエネルギー。
全日本空輸の事業はヘリコプターから始まった。昭和27年設立の「日本ヘリコプター輸送株式会社」(略称日ペリ航空)がその前身である。
そしてプロペラ旅客機の導入。民間航空事業の幕開けである。
ところがその実態は今からは考えられないほどすごかった。
格納庫は自前ではなく、朝日新聞社の格納庫を借りていた。
その格納庫には旅客機の翼端がつかえて機体が入りきらない。
入り口は坂道で牽引車なし。整備員がそろって掛け声で同期をとって押す。
機体が格納庫に入らないので点検整備は野外作業。雨が降るとずぶぬれである。
米軍払い下げのジープが大活躍。牽引車となったり、夜の外食にでかけたり、パイロットを寮まで運んだり。
整備に必要は部品が足りず、駐留軍(米軍)から分けてもらう。
・・・当時、全日空(ANA)が大学生の就職人気トップ企業になることなど、誰が想像しただろう。
航空ファン必読の一冊だと断言する。読むべし。