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ノンフィクション書籍「監察医が書いた死体の教科書」

監察医が書いた死体の教科書 「8何の原則」が謎を解く

監察医が書いた死体の教科書 「8何の原則」が謎を解く

本体価格1300円です。214ページ。

著者の上野正彦氏は東京都監察医務院長を長年にわたってつとめた方で、1989年に退官してから、自らの体験に基づく「死体は語る」を執筆してロングセラーとなり、以降はテレビを始めとするメディアで活動しつつ、いくつもの著作を執筆してきました。


死体は語る (文春文庫)

死体は語る (文春文庫)

この「死体は語る」は法医学の一般向け入門書としてはとても優れています。筆者も10年以上前に購入してから、何度も読み返しました。最初の1冊としてはお薦めです。


で「死体の教科書」です。オビには「私の集大成」、「決定版」といったコピーがならんでいました。これまでに上野氏の著作を読んだ方は、これを本気で期待すると、けっこうガッカリします。

構成としては、死体に関する見方を8つの「何」に分類して示しているのですが、いわゆる5W1Hの分類に2つを追加したものです。整理されているので読みやすいです。

内容は、自分にとっては「死体は語る」を執筆した当時から、現在までのアップデート版といった読み物でした。1989年以降に世間を騒がせた事件(特に無差別殺人や猟奇殺人など)について上野氏がどのように関ってコメントしていったかが分かります。あまりに正直すぎて(マイクを向けられ、あわててとりつくろってコメントしたとかが、はっきり書かれている)、それが面白いです。


内容とは関係ないのですが法医学に関する日本の遅れがいっこうに改善されていない現状が分かったのが悲しいです。1989年の「死体は語る」では、監察医制度が東京23区、大阪市京都市名古屋市横浜市、神戸市、福岡市の七都市にしかなく、偽装殺人の温床になっているとの指摘がありました。

2010年に発行されたこの本では、京都と福岡を除く5都市に減っていました。しかも個人的に調べてみると。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kansatsu/kouza/files/12-fukunaga.pdf
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/03/dl/s0312-8c_0055.pdf

実質的に監察医制度が機能しているのは東京23区と大阪市、神戸市だけ。
法治国家日本の現状としてはあまりに寂しい限りです。というか、犯罪の温床になっていませんか、これ。監察医制度の機能していない区域では、偽装殺人が相対的に見抜かれにくい。恐ろしいことです。



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追記)監察医制度の問題に関連して、千葉大学医学部 法医学教室の提言がとても参考になります。下記リンクをぜひご参照ください。
http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/houi/teigen/index.html