Electronics Pick-up by Akira Fukuda

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超推薦! これまで読んだ中で最大の恐怖を感じた実話「人体冷凍」

「人体冷凍」あるいは「人体冷凍保存」とは、死んだ直後に人体を冷凍して保存し、将来の復活に望みを賭ける行為を指します。将来は医学の発達により、冷凍された人体を復活させられるようになるだろう、との予想に基づく行為です。


この人体冷凍保存を事業とする団体が米国にはいくつも存在します。この本は、救急救命士のベテランだった著者が転職によって偶然にも、ある人体冷凍保存の団体(財団)に就職し、主要なメンバーとして働く中で、そのおぞましい実態を告発するに至った経緯を生々しく描いたノンフィクションです。告発本、暴露本、とも言えますが、勇気の書、とも言えます(なぜなら、個人が組織と対立し、争うには膨大なエネルギーを必要とするからです)。


人体冷凍  不死販売財団の恐怖

人体冷凍 不死販売財団の恐怖


「人体冷凍 不死販売財団の恐怖」
本書は人体冷凍保存の発案と実現の歴史から解説してくれています。私はうかつにも、人体冷凍保存とは全身を液体窒素(マイナス196℃)で冷凍保存するのだと思っていました。違います。ほとんどの人体冷凍保存は、頭部だけを冷凍保存します。つまり、死体から頭部を切断して、頭部だけを液体窒素に浸漬するのです。


頭部だけを保存するのは、二つの理由からです。一つは、人体全身を冷凍保存するよりも費用が安いこと。もう一つは、人格とはすなわち脳であり、脳を保存すれば人格を復活できると考えられていることです。将来には四肢部分を機械で代替する技術が発明されているはずだとの予測に基づいています。


そもそも死んだ人を冷凍して復活することなど、できるのでしょうか?
彼等(人体冷凍保存の団体に登録している人々)は復活を信じています。
もちろん、その可能性はゼロではありません。ですから、ここではその点を議論しません。


問題は、著者が実際に見聞した冷凍保存財団の活動内容があまりに杜撰であり、犯罪行為(殺人行為)すらうかがえることにあります。違法行為は見逃せない、そして死者の尊厳を侵してはならない、との強い思いが本書を執筆する動機になっているとうかがえます。


最も恐ろしいのは、著者が告発した人体冷凍保存の財団が現存し、ホームページがあり、立派そうに(そうみえるのです)活動していることです。財団の名前は「アルコー延命財団(Alcor Life Extension Foundation)」。同財団のホームページには人体冷凍保存の手順や処置室などが綺麗な画像で説明されています。ところが、本書掲載の写真は、ホームページの美しい画像とはまったく違う、おぞましい内容であふれています。


本書を読み、アルコー延命財団のホームページを読むと、いいしれない恐怖が沸き上がってきます。「これは本当に現実のことだろうか」とすら思いたいほどの恐怖です。


そして内部告発を実行した著者が、告発後にたどっている現在までの人生が、さらに恐怖なのです。人体冷凍保存の信者グループから、著者は「人体冷凍保存の最大の敵」かつ「裏切り者」とみなされ、命を狙われることになります。著者が転職するとすぐさま、転職先のオフィスに匿名の電話がかかってきます。「・・・お前がどこに行こうとも、われわれは追いかけるぞ」。


例えようもなく勇気ある行いを少しでも支えるために。本書の購入を強くお薦めします。



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関連資料
ロシアの人体冷凍保存に関する記事(AFP BB)
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2738784/5934438


ペットの冷凍保存に関する記事(英文、USA Today)
http://findarticles.com/p/articles/mi_m1272/is_n2589_v122/ai_15511362/


アルコー延命財団を紹介したテレビ番組の動画(YouTube