- 作者: 新田たつお
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2014/06/30
- メディア: コミック
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アフリカのテロリスト国家と、米国を中心とする多国籍軍が激戦を繰り広げている近未来の日本が物語の舞台。
集団自衛権によって米軍と共同で戦うようになった自衛隊。これにより、日本はテロリストの標的国家となってしまう。そして最悪の事態が訪れる。テロリストが首都・東京で核爆弾を破裂させる。核爆発によって東京は壊滅する。
核テロ以降、日本は現実の日本とは大きく異なる姿を見せる。憲法9条は破棄。このため日本は軍事力を公式に保有することになった。自衛隊は「日本国軍」となり、強大な力を持つようになる。
新たな首都は、関東南部の都市「熱海」。熱海市は「熱海都」となり、隣接する函南市には国防総省がおかれる。
核テロ以降、日本の景況は大きく悪化。首都熱海の街角には物乞いが立つ。失業者は600万人にのぼる(注:2014年の完全失業者数は233万人)。消費税率はさらに上がり、物語の時点では20%に達している。
米国を中心とする多国籍軍で、日本軍は重要な地位を占める。日本軍の兵隊(つまり日本人)がアフリカの戦線で次々と戦死していく。
兵力補強と雇用対策を兼ねて徴兵制度の復活を、政府と軍(日本軍です)は画策する。
以上が、物語の舞台となる近未来の日本の、おおよその姿です。
きわめて真面目なテーマを背景に、新田たつお氏はいつものように、下品なまでのギャグを散りばめながら、ストーリーを進めます。主人公は熱海の饅頭屋に勤める病弱な青年。つまり饅頭職人。饅頭屋の息子、同僚の職人(女性)と主人公は小学校6年以来の幼なじみ。
饅頭屋の主人はなぜか軍部とつながりがあり、饅頭の注文をもらうための条件として、饅頭屋の従業員全員(息子も)を軍隊に出向させます。そこでタイトルの「隊務スリップ」となります。ダジャレです。ストーリーが進行しながら、「異形の日本」が描かれていきます。
「軍国化した日本」という極めて深刻なテーマを、エロネタあり、下品なギャグあり、人情ありのコメディに仕上げて読みやすくするところが、新田たつお氏のうまさを感じさせます。下品なギャグを受け付けない方には読みづらいとは思いますが。
こんな凄い作品はなかなかありません。でも、あんまり売れていないようです。子供に読めないからかもしれません。オトナの読者の皆さま、だまされたと思って買ってください。
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