Electronics Pick-up by Akira Fukuda

日本で2番目に(?)半導体技術に詳しいライターのブログ

フリースケールのCortex-M4内蔵マイコン発表記者会見の記事にみられる異様さ


フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは6月23日に東京で記者会見を開催し、ARM Cortex-M4コア内蔵マイコン「Kinetis」を発表しました。
発表リリース:
http://www.freescale.co.jp/pressrelease/article.php?id=535


自分は都合で記者会見に出席できなかったのですが、失敗でした。出席しておくべきでした。なぜなから、いくつかの異様な記事がメディアに登場したからです。


フリースケールのプロセッサ製品に少し詳しい方であれば、ARMコア内蔵マイコン「i.MX」ファミリのことはご存知かと思います。
i.MXファミリのURL:
http://www.freescale.co.jp/products/32bit/arm/imx/
ARM9、ARM11、Cortex-A8といったコアを搭載しています。


ところが、フリースケールがARMコアを採用したのは「Kinetis」が初めてであるかのような記事が出現したのです。それも2つのメディアがそのように書いています。


まずTech-On!です。小島郁太郎記者の記事です。
「「顧客の声には勝てない」,FreescaleがARMコア・マイコンに進出」
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20100623/183694/
本文には「 Freescaleは,これまで32ビット・マイコンとしては,68系のコアをベースにした「ColdFire/ ColdFire+」とPowerアーキテクチャ・コアの「QorIQ」を提供してきた。それにARMコア系の製品が加わった。」とあります。コメント欄にi.MXを指摘しているにもかかわらず、記事は修正されていません。


それからEETimes Japanです。笹田仁記者の記事です。

「フリースケールがARMコア搭載マイコンを発表、アナログ混載で信号処理機能強化を狙う」
http://www.eetimes.jp/news/4040
本文には「Kinetisシリーズは、フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンおよび、米国本社であるFreescale Semiconductor社としては初となるARMコアを搭載したマイクロコントローラーだ。」とあります。


Tech-On!とEETimes Japanはどちらも電子技術の専門メディアだと思っていましたが、これらの記事には少しショックを受けました。ただしフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンが記者会見でわざとi.MXにはふれずに「ARMコアは初めて」といった印象操作をした疑いが残ります。2誌が「初めて」と伝達するような誤報が出てくるには、発表者側にも何らかの問題があった可能性は少なくありません。


ちなみにEDNJapanは次のように報じています。朴尚洙記者です。
「Freescale社の「Cortex-M4」ベース汎用マイコン、7ファミリ/200品種を展開」
http://ednjapan.cancom-j.com/news/2010/6/6943
本文には「同社はこれまで、32ビットマイコンとして、「Power Architeture」コアをベースとして100MIPS〜400MIPSの処理能力をカバーする車載用途向けを中心とした製品群と、 50MIPS〜200MIPSの処理能力を必要とする民生用機器向けの「ColdFire/ColdFire+」を展開している。」とあります。「ARMコアが初めて」とは書いていませんが、32ビットマイコンであるi.MXファミリが無視されています。


ほかにはマイコミジャーナルが記事を書いていますが、
http://journal.mycom.co.jp/news/2010/06/23/046/index.html
i.MXファミリについてはふれていません。もっとも記者会見ものにしては記事の内容が平板で、i.MXにふれる必然性が無いテキストになっています。


このため、「フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンがi.MXファミリにふれずに記者会見でプレゼンテーションした」との疑いがさらに強まりました。


もちろん、i.MXファミリを知らなかったとしたら、それははメディア側の責任です。記者会見での相手の説明を鵜呑みにして記事を書いていたのでは、専門誌の存在意義が問われます。


このような次第で、記者会見に出席しなかったのは非常に悔やまれます。
自分が出席していたら、質問でi.MXのことを指摘できたのに・・・。
そうすれば恥ずかしい記事が出てしまうのを防げたかも。かも。


実際これまでにも、「白い嘘」っぽい説明を記者会見で発表者側がしてきたときは、質問で軌道修正をしたことがあります。発表者やPR代理店は嫌がったかもしれませんが。誤報が出るよりはマシです。