Electronics Pick-up by Akira Fukuda

日本で2番目に(?)半導体技術に詳しいライターのブログ

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世界各地の海底にある新型爆弾の処理に挑む若者を描く【コミック】「PACT」

PACT(1) (ヤンマガKCスペシャル)

PACT(1) (ヤンマガKCスペシャル)

海洋サスペンス・アクション。
謎のテロリストにより、世界各地の沿岸海底に新型爆弾がおびただしく配置された近未来が舞台。新型爆弾は時限爆弾となっている。刻限が最も近かった米国は爆弾処理に失敗して壊滅してしまう。主人公は日本の爆弾処理部隊の中核を成す若者たち。日本沿岸に仕掛けられた爆弾は3個。その1個目の刻限は10日後を切った。出動した爆弾処理部隊は、待ち構える罠によって多大な犠牲を出すが、かろうじて1個目の爆発は回避する。しかしまだ、2個の爆弾が残っている。立ち止まることは許されない。


ストーリーに勢いがあり、ぐいぐいと読者を引っ張っていきます。なんにも考えずに読んでいくと、その勢いに引き込まれます。


問題、というか大問題なのは、内容について考え始めると、設定やストーリーなどに大小さまざまな現実無視があることに気付いてしまうこと。これはまずい。甚だしく困ります。


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(以下は内容に触れる部分が多々あります)


現実無視の例を挙げるとですね。

海水中、しかも結構な水圧下でノートパソコンが使えてしまう。タフブックよりも遥かに防水耐圧性能の優れたパソコンがないと説明が付かないんですが、説明はありません。
海水中なのに銃火器が使えてしまう。そもそも水没した時点で発火不能なのに。
爆雷が数多く投下されるのだが、描かれている爆発力の大きさと爆雷の機能(ホーミング機能付き)を考えると、爆雷が小さすぎる。ピンポン球くらいしかない。


あと、読者に対する常識的な説明が欠落しています。読んでいてきついです。


窒素爆弾がどんなものかが分からない。核爆弾よりも強力そうだが。沿岸海底の爆弾で合衆国全体(山脈あり)を水没させるほどの威力があるそうだけど、ちょっとすごすぎるような気がします。

合衆国が水没という大災害が引き起こされたにも関わらず、周辺諸国への影響(例えば巨大津波とか)がまったく描かれていない。

爆弾が潜水艦のような船体の中に格納されているのは良い(水圧対策でしょうか)として、外部から内部構造を探知する技術はいくらでもあるのに、それが作戦前に利用された形跡がない。結果として爆弾処理作戦が作戦レベルのものではなく、行き当たりばったりレベルに堕落している。掲載誌は青年誌なんだから、もう少しリアリティを持たせて欲しい。

2回めの爆弾処理作戦で、初回の作戦の失敗に学んで対策を打った形跡がない。これは通常の作戦行動ではあり得ない。


まだあるのですが、疲れたのでこのへんで(苦笑)。


絵作りとか勢いとか読者牽引力とかはあるので、物語の設定を根本的に変えるべきだったと愚考します。粗く言い切ってしまうと「作戦の舞台が海中である必然性がない」のです。これが地上戦の爆弾処理だったら、ボロが出なかったと思います。はっきり言って、水中とか海中とか海底とかの環境に対する知識不足が甚だしいです。物語作りをなめてますよ、コレ。編集者には「こんな杜撰な企画で通すな」と言いたいです。


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