「漏れ電流を最大90パーセント削減する新技術を開発
米ミアーズ・テクノロジーズ社、量子力学によりシリコンの電気特性を一新」
http://www.elisnet.or.jp/common/news_detail.cfm?select_news_id=10287
広報代理店から拝領したリリース抄訳の抜粋:「ゲート漏れ電流を、 NMOS(N形金属酸化膜半導体)トランジスタで最大70パーセント、PMOS(P型金属酸化膜半導体)トランジスタで最大90パーセントも削減しつつ、必要な駆動電流は確保します」
これだけ読むと何のことか分からない部分があるので、リリースにあたってみた。
http://www.mearscorp.com/news/MEARS_Technologies_Launch.pdf
こちらに原理説明があった。
http://www.mearscorp.com/mst.html
推定するとこんな原理らしい。
・シリコンMOS FETのチャネル領域に超格子構造を形成して、縦方向のリークを防ぐ
・超格子構造の薄い層は絶縁層として働き、縦方向の電流を阻止する
・超格子構造の薄い層を横方向電流(チャネル電流)が流れる
・通常のCMOSプロセスと互換性がある
ただし
・超格子構造の形成方法と材料、詳しい構造(バンドギャップ構造)などは記述されていない
・トランジスタの試作データは掲載されていない
実際にどこまで上手く動作するかは、正直言って分からない。額面通りに受け取ると、ゲート酸化膜の欠陥がいくつかあってもトランジスタとして動作するということになるのだが。超格子構造を形成する方法が不明なので、なんとも言えないところがある。まさかMBEを使うわけではないだろうし。通常のCMOSプロセスと互換だとしているので、イオン注入でデルタドーピングの積層構造(超格子構造)を作るとか。不純物原子を換えればなんとかなりそうな気もするが。とりあえずは追加情報待ちである。
補足情報:この会社は米国の技術開発ベンチャー。
こういったプレスリリースを出す目的はいくつか考えられる。典型的なのは、
1)研究開発の資金集め
2)研究者の求人広告
現在は研究そのものが始まった段階とみられるので、このくらいかと。
さらに補足:こういったスタートアップ企業のリリースが日本のPR会社から抄訳として出ることは、1980年代後半にはなかった。2000年を過ぎてからだろうか、海外無名ベンチャーのリリースが日本でも配布されるようになったのは。ベンチャーキャピタル探しの対象として日本企業が期待されているということかな。