Electronics Pick-up by Akira Fukuda

日本で2番目に(?)半導体技術に詳しいライターのブログ

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ひ弱なひよこだった小さなインテルを支えた日本企業の物語

(参考エントリー)インテルに世界初のマイクロプロセッサをもたらした日本企業「ビジコン」の物語
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1970年代に、小さなベンチャー企業だったインテルを支えたのは太平洋を隔てた日本にある電子システム企業群でした。その1つがビジコンです。ビジコンの物語を執筆したときに大いに参考にさせていただいたのが、ひよこだったインテルを支えた日本企業の経営者や技術者を描いた書籍「インテルがまだ小さかった頃」です。


伝田信行 インテルがまだ小さかった頃 (B&Tブックス)

伝田信行 インテルがまだ小さかった頃 (B&Tブックス)


この本の成立過程が非常に面白い。

日刊工業新聞社の記者である奥田耕士氏がインテル日本法人の社長をつとめた傳田信行氏にインタビューして回想録をまとめるはず、でした。


ところが昔のことを厳密かつ精密に思い出すというのは、大変な苦行なのです。新聞記者である奥田氏のインタビューの何回目かで、傳田さんがギブアップします。妥協案として出てきたのが、傳田さんの回想を交えつつ、傳田さんがお世話になった日本企業(顧客企業)の関係者に奥田記者がインタビューし、インテルと日本企業の関わりを本にまとめることでした。


奥田記者がインタビューを試みた関係者は21名に上ります。「傳田さんが紹介する」ことでこれまで報道機関の取材に応じてこなかった技術者が、インタビューに答えてくれる。正直、ものすごく羨ましいです。大変に貴重なインタビューをまとめたことで、まったく類を見ない、珠玉のような本ができあがりました。日本の電子産業を支えた有名な人物、隠れていた人物が続々と登場してきます。


この本を読むと、日本の電子企業がいかに辛抱強く、インテルの製品を使ってくれたかが分かります。そしてインテルの日本法人がいかに頑張ってくれたかが分かります。本文中に著者は「インテルは日本の方向(西)に足を向けて寝られない」と述べています。その通りです。


残念なことが2つあります。1つは、本文中にいくつかの誤りがあることです。例えば小島和三郎が興した会社は「昌和洋行」です。この本では「唱和洋行」となっていました。また小島義雄氏がビジコンに入社したのは「1950年」のはずなのですが、この本では「1943年」となっています。


残念なもう1つは、古本でしか入手できない、電子書籍版が存在しないことです。


伝田信行 インテルがまだ小さかった頃 (B&Tブックス)

伝田信行 インテルがまだ小さかった頃 (B&Tブックス)


誤りを直した電子書籍版が発行されると、とってもありがたいです。