先に結論となる主張から述べます。
まず、東京電力管区内の「発電・送電・配電」を担う新会社「関東電力(仮称)」を政府出資で設立します。
次に、東京電力の全事業を精算し、全資産を売却します。売却益は原発事故補償に充当します(国鉄精算事業団のような資産売却を進める組織が必要かもしれません。重要なのは、東京電力を身ぐるみ剥がして裸にすることです)。不足分は政府が補填します(債務超過状態であることが前提になっています)。同時に「関東電力(仮称)」が東京電力の全事業を引き継ぎます。
東京電力の役員は全員解雇します。従業員も全員を解雇します。
新会社「関東電力(仮称)」は元東京電力の従業員を原則としてすべて雇用します。ただし、雇用条件は大幅に変更され、総人件費は圧縮されます。
「関東電力(仮称)」は送電事業は地域独占とします。発電と配電については地域独占を取り止め、自由化します。
東京電力の債権者は東京電力の精算にともない、法的スキームに基づいた債権放棄を実行します。株券は無価値になります。
以上は中年オタの妄想なんですが、ここからはちょびっと真面目に。
少なくとも「東京電力(実質債務超過状態)に会社更生法を適用すべき」だと、最近の報道記事を読むたびに強く感じています。2011年8月3日に「原子力損害賠償支援機構法」が成立したことで、倒産の危機を回避した東京電力が元のふんぞりかえって威張り散らす醜悪な巨大企業へと回帰しつつあるように見えます。
墨塗りだらけの国会委員会向け報告書とか、電力料金値上げと原発再稼働のバーター(値上げを人質に原発稼働をたくらんでいるのかと勘繰りたくなる)とか、非現実的なほど分厚い賠償申請書(読まずに署名させようとしているのかと勘繰りたくなる代物)とか。酷いです。
当たり前のことですが、会社更生法を適用することになれば、東京電力の実態は管財人によってきちんと精査され、丸裸になることが期待できます。当然ながら、東京電力の幹部にとっては悪夢の事態であり、どんな手段を採用してでも会社更生法の適用は阻止したいでしょう。銀行をはじめとする金融機関は東京電力の債権者ですので、日本航空の会社更生法適用のような事態(債権放棄とか株券が紙くずになるとか)は避けたいと強く強く願っています。
原子力損害賠償支援機構法は、東京電力と債権者(株主や融資元など)が政界と組んで成立させた法律と言えます。政界でグルになった政党は、民主党と自民党と公明党です。これらの政党に選挙で投票することは、今後、永遠にないでしょう。法案に反対した、みんなの党、共産党、社民党のどれかに投票することにします。
東京電力を倒産させることが、国民負担の軽減につながることははっきりしています。私ごときが説明するまでもなく、5月〜6月の時点でいくつもの試算・試案が出ています。
ダイヤモンドオンライン「原発事故賠償金の国民負担を少なくし、電力料金引き下げも可能な処方箋を示そう」「賠償額のほとんどが国民負担となる政府案」
http://diamond.jp/articles/-/12214
http://diamond.jp/articles/-/12214?page=2
朝日新聞社 Astand 「「東電は法的処理が望ましい」「政治のリーダーシップが必要」東電賠償問題で斉藤惇東証社長が提言」
http://astand.asahi.com/magazine/judiciary/articles/2011053100009.html
ZakZak 「東電賠償法案が不成立なら法的整理は避けられないが国民負担は一番小さくなる」
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110616/plt1106161432003-n1.htm
さらに、東京電力が公表した損害賠償基準そのものがいくつもの不作為の罪を抱えており、これについて9月2日に日弁連が会長声明として抗議しています。
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2011/110902.html
会長声明中の一文「損害の証明のための必要書類について、被災者に領収書や各種証明書の提出を求めているが、被災地域内に会計記録を置いたまま避難しているケースや、事故後の混乱の下、何度も移動を余儀なくされた中で、これらの書面が保管されていないケースも多く、十分な補償が受けられるかどうかについて、不安の声が上がっている。」を読むだけでも、東京電力の誠意のなさがよく理解できます。東電福島第一原発周辺の住民が避難させられたときの状況(ほんの少しの時間だからと何も持たずにバスに乗せられた)を意図的に無視しています。
こうなると東京電力は「国民の敵」と化していると考えざるを得ません。もちろん、東京電力および関連企業の現場で働く従業員には罪はありません。従業員が施設を通常通りに動かせば、幹部などいなくても電気は供給されます。会社更生法はそもそも、事業継続を前提とした法的整理と再生の仕組みを明文化したものです。とっとと潰したほうが、従業員も安心して働けるようになるんですがね。
推薦書籍リストへ←筆者が推薦する書籍です。購入していただけると筆者の生活が少し楽になります(マジです)