- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2011/04/18
- メディア: 雑誌
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週刊東洋経済2011年4月23日号特集「迷走する巨大企業の正体 東京電力」を推薦します。
原子力事業者(すなわち電力会社)を扱った書籍のほとんどは、重大な弱点を抱えています。それは著者が「原発推進」と「原発反対」のどちらかの立場で、情報を発信していることです。このため、情報にバイアスがかかる、都合のよい情報は開示するが都合の悪い情報は隠す、感情的な主張をする、といった点が少なからずみられ、読んでいて判断材料とならないことが少なくありません。困ります。
その点、本号特集は中立的な立場から記述されており、東京電力という巨大企業を冷静かつ冷酷に見つめています。以下はとても参考になった記事の例です。
東京電力の存続シナリオ(34ページ以降)
「ニッポン原子力村」相関図(38〜39ページ見開き)
全解剖 東京電力コネクション(40〜41ページ見開き)
東電に振り回された「双葉町」(50ページ以降)
むつ中間貯蔵施設と原子力マネーの深い霧(52ページ以降)
事故収拾をまかされた英雄たちの「実像」(54〜55ページ見開き)
スペシャリストインタビュー「菅谷昭氏(松本市長/医師)」(56ページ以降)
必読なのはスペシャリストインタビューです。菅谷昭氏はチェルノブイリ原発事故後のベラルーシに滞在し、5年半の間、甲状腺がんに苦しむ子供たちの治療を続けてきた方です。言葉の重みが違います。以下はインタビュー本文からの引用です。
「ベラルーシでは、住み慣れた土地から強制的に避難させられた、あるいは汚染地区に住まざるをえない住民の切なさや悲しみを見てきた。その経験からいえば、核の災害は自然災害とはまったく違うことをわかってほしい」(太字は筆者)
「当初から最悪の事態を想定して、先手、先手を対策を打つべきだった。やりすぎるということはない」
「机の上で考える研究者というのは、どうしても現実味がないから甘い」
戦慄したのは3月下旬に開かれた内閣府の食品安全委員会に参考人として菅谷氏が出席した件です。
「委員の中には、「甲状腺がんはたちがいいがんだから、大したことはない」という人もいた」(太字は筆者)
「私がいなかったら「甲状腺がんは大したことはない」で通ってしまったのではないか」
「放射線の専門家は個々の被害者のケースを考えない。みんな統計で集団として扱ってしまう。国民一人ひとりのレベルで考えてもらわないと困る」
これが食品安全委員会の委員サマなのですか。けっこうな恐ろしさです。
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