Electronics Pick-up by Akira Fukuda

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連載記事:クリプトン物語(ITmedia)と初音ミク開発物語(日経エレクトロニクス)を比較する(その2)

前回ITmediaの記事にツッコンでみました。
今回は日経エレクトロニクスの記事にツッコンでみます(ツッコンでみるとは、デスクモードで読んでみる、の意味です)。


日経エレクトロニクス2008年2月11日号開発物語「パソコン用歌声合成ソフト「初音ミク」 <第1回>出会いは着メロから」(107ページ〜110ページ)
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/HONSHI/20080205/147018/
(注:上記URLにあるのは記事の導入部だけです)
本文冒頭「2007年も押し詰まった12月29〜31日。東京ビッグサイトで世界最大の同人誌即売会コミックマーケットコミケ)73」が開催された。ここに初出展にもかかわらず,多くの来場者でにぎわう企業ブースがあった。クリプトン・フューチャー・メディア(以下,クリプトン社)の展示ブースである。同社は,2007年8月に発売され,大きな話題となった歌声合成ソフト「初音ミク」のメーカーである。」

結構ずっこけました。すぐに浮かんだ疑問をならべましょう。

1)エンジニアの中で「同人誌」がどういうもので、「コミケ」がどのような催事か知っている人間は少ないと思います。なのに、両方の用語に関する説明がない。
2)同人誌即売会なのに「企業ブース」とはどのような意味なのかが説明されていない。
3)クリプトンが出展した内容にふれられていない。
4)「初出展の企業ブースが来場者でにぎわうことは珍しい」との前提が入っているが、根拠が示されていない。
良くデスクがすんなり通したと感心しました。


次の段落もなかなか凄いです。
引用:「初音ミクは,ヤマハの歌声合成技術「VOCALOID2」を採用し,あたかも少女が歌っているかのような歌声をパソコン上で作製できる,DTM (desktop music)というジャンルに属するソフトウエアである。2007年8月の発売と同時に,DTMソフトとしては異例の大ヒットを記録した。」

疑問リストです。
1)「ヤマハの歌声合成技術「VOCALOID2」」が突然でてくる。たぶん分からない。
2)「DTM (desktop music)」が突然でてくる。たぶん分からない。
要するに、記事を読んで分からない単語があれば「ググレ」と言われているように感じます。ウエブマガジンならこれはわかりますけど(元々インターネット接続されているのでググるのは簡単)、紙ベースでコレはどうかと思います。

そのほか。
引用:「特筆すべきなのは、動画共有サイトのユーザーが初音ミクをあたかも「16歳の美少女アイドル歌手」と擬人化して受けれている点である」とし、その理由を「彼女のリアルで可愛い歌声」としています。その後で「クリプトン社の戦略の効果も見逃せない」と言い訳していますが、文脈からいうと「リアルで可愛い歌声」を擬人化の主要な理由としていることは明らかです。
ですが、この記述には異論を唱えます。まず、初音ミクの歌声は素のままでは「リアルで可愛い」とはとても呼べず、ロボットのような声(ロボ声)で出力されます。可愛いとは言えなくもないですが。リアルはひどい。プロの歌手が怒るのではないかと心配ですし、プロの歌手のファンにも失礼ではないかと。
擬人化の最大の理由は「クリプトンが擬人化した設定を発売前にいくつも宣伝したこと」だと私は唱えます。


そのほか。歌声合成の原理説明の例で「Sing」という英単語を使用していますが、不適切です。日本語のVocaloid製品と英語のVocaloid製品は音素が違うので、日本人向けの雑誌「日経エレクトロニクス」で日本語の歌を歌うことが前提の「初音ミク」の記事で、なぜ、日本語の単語を事例に使わなかったのか、理解できません。

なおヤマハのウエブ・サイトでは「咲いた」という日本語の単語を例に歌声合成の仕組みを説明しています。
http://www.vocaloid.com/jp/index.html

おまけ。110ページの図3はヤマハのウエブ・サイトのある図面の写しです。
http://www.vocaloid.com/jp/features.html
上記ページの下にある図3「Vocaloidのシステム構成」をクリックすると下記の図面が出ます。


そろそろ時間切れです。
すみません。続きは後ほど。