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超強力推薦!フランス革命前後を生きた死刑執行人の物語「死刑執行人サンソン」

フランスがルイ王朝から革命によって民主共和制へと移行する激動の時期にパリで死刑執行人をつとめた実在の人物、シャルル・アンリ・サンソンの生涯を描いた物語。ものすごく面白いです。死刑制度に関する重要な参考書とも言えます。





元々はこの本を原作とするコミック「イノサン」を読み始めたことがきっかけです。コミックは絵がとても美麗で内容も面白いのですが、問題が1つありました。残虐描写が多すぎて途中で読めなくなってしまったことです。


(残虐描写に耐性のある方にのみ、オススメします)


どうしようかと困っていたときに、原作本の存在を知りました。テキストであれば、残虐な絵がない。読めそう。これだ。


読んで見たところ、想定を遥かに超えた面白さでした。そもそも、中世というのは生まれた家で生涯が決まってしまう時代。死刑執行人も例外ではない。死刑執行人の家に生まれた人間は、死刑執行人になるしかない。社会の安定には不可欠な存在である死刑執行人ですが、世間からは忌み嫌われます。その矛盾した構造に、サンソン家の四代目当主であるシャルル・アンリ・サンソンは憤り、怒り、そしてこれらの激情を封じ込めたまま、死刑執行人としての義務を遂行していきます。フランスのルイ王朝における「王権の代行者」であるという誇りとともに。


ところが、フランス革命が起こってしまう。サンソンはルイ16世を敬愛していた。そして起こる悲劇。


(以下は内容に著しく触れる点があります)






この書籍の凄い点は、死刑廃止論の強力な援護役となっていることです。
サンソンは断固として主張します。「死刑制度こそが廃せざるべきもの」だと。
その根拠は非常に強力なものです。サンソンは、復讐の感情による死刑を認めません。
復讐とは「個人的な事情」に基づくものだからです。
「死刑制度」とは公的なものであるから、被害者の感情とは離れたところに存在しなければならない。しかし誰が「死刑」について責任を負えるのか。判決が誤りだと後年に判明した場合(冤罪だと分かった場合)、死刑が執行されてしまうと取り返しがつかない。あるいは、再審の道が途絶えてしまう。


現代日本でも、警察の存在がある種の犯罪には抑止力になっていないこと。むしろメンツが重要で、メンツを潰されると、真犯人の逮捕や検挙などには怠慢とも言うべき不熱心さがあること。今だに物的証拠よりも、不確実な「自白」に頼ろうとする傾向が見られること(冤罪につながる)など。警察組織の問題点を挙げれば、キリがありません。


死刑制度について考えるには、本書は最適な参考書です。強力にプッシュします。