現在では「浮浪雲」を超長期連載中で、かつては「銭ゲバ」や「アシュラ」、「デロリンマン」などの異色かつ衝撃的な作品を数多く創作してきたジョージ秋山先生の作品の中で、個人的には最も気に入っており、忘れられないのが「ザ・ムーン」です。初めて読んだのは小学校高学年あるいは中学生のときだと思います。
- 作者: ジョージ秋山
- 出版社/メーカー: eBookJapan Plus
- 発売日: 2014/11/14
- メディア: Kindle版
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「正義と悪の闘いなどない」
「あるのは正義と正義の闘いだ」
「力なき正義は無意味だ」
たぶん、テレビ番組「仮面ライダー」がブームとなっていたころです(1972年ころかなあ・・・記憶とは頼りにならないものです)。自分は仮面ライダーが大嫌いでした。「ショッカー」という世界征服を企む悪の軍団という荒唐無稽な設定がどうしようもなく嫌で、当時はあまり人気のなかったテレビアニメ「ルパン三世」にハマり込んでいました。だってルパン三世はリアルだったんですよ。本当にいそうな悪のヒーローだったんですから。もうルパンと次元と五右衛門と不二子にぞっこんです。
そんなひねくれた自分のココロを捕まえた漫画が「ザ・ムーン」でした。冒頭のコメントは第1巻でロボット「ムーン」を作らせた大金持ちが主人公の子どもたちに向かってしゃべるセリフです(記憶なので一部違っているかもしれません)。衝撃でした。当時の少年漫画でここまで本当のことを言ってしまうとは。
力なき正義は無意味だから、力であるロボットを作らせた。でも大金持ちの自分は心が汚れているから、正義の心を持っていない。正義の心を持っている全部で9名の少年少女に、ロボットを贈り、好きなように動かして「正義」を実行してもらう。
もちろんといいますか、ロボットが簡単に動かせては面白くない。そこは仕掛けがあります。動かすまでがなかなかに大変でした。そして9名の少年少女に魔の手が迫る(お約束ですね)。お約束のように登場する敵の組織。ストーリーはどんどん進みます。そしてわずか全4巻で完結する物語。濃密です。