- 作者: 柳内たくみ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/09/13
- メディア: 文庫
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いわゆるタイムスリップ物と言われるSF小説です。それも最近は良く題材として取り上げられている戦国時代へのタイムスリップです(古典となった「戦国自衛隊」に始まり、最近では「信長協奏曲」、「天下一!」、「群青戦記」などがありますね)。
訓練中に戦国時代にタイムスリップしてしまった陸上自衛隊の狙撃隊員(二等陸曹)が主人公。本作の特徴は、タイムスリップしたのが主人公だけ、たった一人、であることに尽きます。一人ですから、そもそもタイムスリップしたことが分からない。訓練中に周囲の状況が激変したことは把握できるものの、いったいぜんたい何がどうなったのか、すぐに分かるはずもありません。理解不能の状況です。
作品ではそこから始まり、主人公が状況を把握していくまでが、丁寧に描かれます。読むのが大変だと言えなくもないのですが、姿勢としては好感が持てます。リアリティを持たせるためには、大事なことですから。
続いてサブタイトル通りの「織田信長との遭遇」。信長はもちろんのこと、信長をとりまく味方の武将やら敵方の武将やらが続々と登場・・・と言いたいところですが、物語の視点はずっと平民寄りです。平民の暮らしぶりがきちんと描かれていることが、作品のリアリティをさらに高めています。
そして陸上自衛隊の経験が、戦国時代でどのように活かされるのか。ここからが本編です。地味だけど堅実。派手さはないけどリアル。そんな作品です。